約 561,602 件
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutau2/pages/169.html
ゆっくりは草食である。 「幻想郷甘味事情の救世主」「ストレス解消の的」などと呼ばれるゆっくりが 農家に害獣扱いされるのはこの時点で決まったようなものだった。 とはいえ実際のところ農民がゆっくりを毛嫌いしていると言う事実は無く、他の人間同様に 甘い物を安価に手に入れられて良かったと思っている者の方が多かった。 畑にわざわざ侵入して野菜を盗み食いするよりは、野原で昆虫をゆっくり追いかけるほうを好む ゆっくりの習性がどちらかというと無害である事をを人々に意識させたのだ。 その筈だった。 外から迷い込んで農業の真似事をしていた筈の私が、今ここでこうして畑を荒らすゆっくりたちの 進入を待ち伏せしているのは、連中が有害という事実を示していた。 事のそもそもの発端は一月前にさかのぼる。 ここへ迷い込んだ後、とにかく食料を得るため借りた貧相な畑でサツマイモがそろそろ収穫という時期だった。 その日の朝、畑へ行った私は、三匹のゆっくりが芋を掘り返してかじっているのを見た。 最初に思い浮かんだのが、手塩にかけて育てた芋を台無しにされた怒りよりも、 生で食べると腹(?)を壊すんじゃないかと言う心配だったのは我ながら間抜けであったと思う。 ともかく現在進行形でかじられてる芋は諦めるとして、これ以上被害を増やさないために私は考えた。 なまじ甘い態度を取るといつまでも居座るとはベテランの農夫の談、直ちに追い出さなければならない。 さらに、頭が妖精よりも弱いと評判のゆっくりは、生半可な恐ろしさで怒鳴って追い出しても 明日には忘れて再び現れるというのが考えられる。 これを満たす手段を考えていた私は、「外」に住んでいたとき農家がカラスの死骸をつるしていたのを思い出した。 (幻想郷では見られなかった。鴉天狗に血祭りにされかねないからだろう。) この手段を採用した私はゆっくりの死体を3つ生産すべくゆっくりと背後に近づき、 奇襲効果を得られるうちに攻撃するためクワを振りかぶった。 「ゆっくり?」 振りかぶった瞬間、ゆっくりが一斉にこちらを向いた。 ゆっくりが太陽とは逆を向いていたのを失念していたのである。 ここで止められる訳が無い、全力でクワを振り下ろした。 「ゆ゛っ!」などと断末魔をあげて真ん中の紅白饅頭が絶命する。 直ちに第二撃を繰り出すため、刺さった歯を抜き構える。 「や゛め゛て!ゆ゛っく゛りし゛ようよ!!」 もう一匹の紅白饅頭が命乞いのセリフを吐き出した。 黒大福は薄情なことに「ゆっくりしんでね!」などと言って逃走した。ひどい大福だ。 とりあえず死体は一つ手に入ったので、生きている方の紅白饅頭を捕縛して自宅に戻った。 紅白饅頭を押入れの布団の下に放り込んだあと必要な材料を持って畑へ行き、 近くの木の枝に死骸を入れた袋を「私は悪いゆっくりです」と書かれた板と一緒にぶら下げた。 黒大福を逃したのが心残りだったが、私は一仕事終えた充実感を胸に帰宅した。 それから1週間後、どうやったかは知らないが あの逃走した黒大福が仲間を大勢引き連れて(2ダースはいたと思う)畑を荒らしていた。 「おいしいね!」「ゆっくりたべようね!」 早すぎでも収穫すべきだったと後悔しつつ、私は鍬を振り上げ突進した。 「ゆっくりしていってね!!」「さっさとかえってね!」 などと腹の立つ言動をしながら大福と饅頭が向かってくる。 だが所詮ゆっくり、金属製の鍬を受けるとあっさり昏倒、あるいはバラバラになり、それをみた 他のゆっくりは蜘蛛の子を散らすように逃げてしまった。 結局、饅頭四個分の餡子と皮を生産し、捕虜(めんどくさいので木に吊るした)を2匹手に入れただけだった。 それからは毎日ゆっくりの襲撃を受けるようになった。 毎回毎回追い回すのも面倒なので、5回目の時点で進入方向を限定するための柵を設置した。 進入経路で待ち伏せて5回目は畑に入ることすら許さなかったが、6回目は大量に引き連れて数で突破された。 (後で適当な大福を尋問したところ、黒大福がこの畑に「メッチャうめえ」物があると吹いているようだった) ゆっくりどもにこちらの恐ろしさを教育してやるため、襲撃後ただちに里へ香霖堂へ装備の調達に走った。 陣地を構成する障害物は鉄条網・トゲつきの柵・斜めにつきたてた槍などがその後の何回かで増えた。 そして現在、21回目の襲撃後の畑は様変わりしすぎて畑と呼ぶことが難しくなりつつある。 時計からそろそろ襲撃時刻(午前6 00ごろに来る)になりつつあることを見た私は、 香霖堂で調達した双眼鏡を森の方へ構える。 木々の緑の中に紅白・黒の丸い物体がポツポツと見え始めた。 「総員戦闘配置!」 10回目頃から事態に気づき、加勢してくれたヒマな農夫や 天然のゆっくりがノコノコやってくるということで協力しに来た加工所職員へ 大声でゆっくりが来たことを伝える。 最近は畑よりも捕虜の救助が目的でゆっくりが襲撃してきているようなので、 紅白饅頭をガラスケースに閉じ込めたものを数個、進入経路に設置してある。 「いまだしてあげるね!」「いっしょにゆっくりしようね!」「がんばってこわすよ!」 案の定、その地点で群れが停止した。 そこまでを確認した私は、地面に斜めに突き立っている筒の所へ行き、その筒へ何物かを入れた。 その物体が筒の一番下まで到達すると、瓶の栓を抜いたような音があたりに響いた。 「5、4、3、2、だんちゃーく、今!」 言い終えると同時にガラスケースの所で爆発が起きる。宙を舞うゆっくりが確認できた。 下ろして欲しいという意図の悲鳴がここまで聞こえてきた。 その意図は直ちにかなえられ、地面にたたきつけられたゆっくりはずっとそこでゆっくりすることになった。 「毎回掛かるのはやはり脳が足りないんですかね?」 加工所職員に話をふると「そもそもあるのかどうか…」と気の抜けた返事が返ってきた、同感だ。 香霖堂で調達した迫撃砲は数に限りがあるので一発で射撃を終了する。 いつものようにゆっくりの群れがこちらに向かってきたが、前面の鉄条網で押しとどめられる。 「い゛た゛い゛!い゛た゛い゛ぃ゛ぃぃ゛!」「ゆ゛っく゛り゛おさ゛な゛いでぇ!」 鉄条網に引っかかった仲間の上を通るという共産軍さながらの方法で、第一線は通られた。 本来ならばさらに第二、第三と鉄条網を張るつもりであったが、流石の香霖堂でも鉄条網が そう簡単には手に入らず、第一線の後は射的タイムである。 おのおの、弓やボウガンや猟銃を構えて号令を待つ。 第一線を乗り越えたゆっくりは150匹であった。 最初の迫のダメージで7匹力尽き、そこへ最初の射撃が到達し12匹が倒れる。 この射撃音で怖気づいた22匹が逃走し、さらに第ニ射で16匹が倒れた。 「もうやだ!おうちかえる!」「おうちかえっぶげぇ!」 地面に刺しておいた槍の障害物で、遮二無二突進した9匹が串刺しになった。 柵と組み合わせたその障害物でまごまごしてるあいだに第三射が全弾命中し18匹が死体となった。 さらに15匹逃走して、残りが何とか射撃線へと到達する。 加工所職員が柵を乗り越え、慣れた手つきでゆっくりを8匹捕縛し、31匹逃走させた。 1ダースとなったあの黒大福を含むゆっくりの精鋭は農夫には目もくれず私のところへ突進してきた。 手近にあった陣地構築用の洋ノコをとっさに構え、まず飛び掛ってきた一匹を切り裂いた。 「ゆ゛っ゛く゛りぶぇ゛!?」 雑な切断面から餡を撒き散らしながら落ちる物体には目もくれず、二匹目を足で蹴り飛ばした。 蹴った瞬間破裂した物体は飛翔しながら餡と皮に分解していった。 さらに突進してきた三匹目は一番悲惨で、フルスイングされたノコの直撃を受けたあと、 バラバラになりつつ飛翔して障害物の槍に刺さった。 残りの9匹のうち4匹が農夫に捕縛され、散り散りになって逃げ出した最後の5匹は背中に射撃を受け 「もうゆるじで!!」「やめて!ゆ゛っく゛りし゛ようよ!!」 2匹にまで数を減らしつつ逃走に成功した。 この2匹が命からがら森へ入ったのが6 58であった。 以上が22回目の襲撃とそれまでの経過の概要である。 選択肢 投票 しあわせー! (25) それなりー (5) つぎにきたいするよ! (8) 名前 コメント すべてのコメントを見る
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutau2/pages/745.html
比較的街に近い、さほど高くもない山の中、一人の男が息を潜めて標的のゆっくりに近づいてゆく。 彼の視線の先にいるゆっくりはごく平凡なゆっくりれいむの子どもで、陽気に中てられたのか無防備な寝顔を晒していた。 「ゆぅ~・・・ゆぅ~・・・」 安らかな寝息を立てる子れいむと男の距離は10m程度。 彼はゆったりとした動作で手にした筒を口元に持って行き、思いきり息を吹きかけた。 瞬間、筒の中に収まっていた小さな矢が子れいむめがけて飛んでいき、下あごの辺りに刺さった。 「ゆびゅ!?」 痛みで目を覚ました子れいむだが、ゆっくりの体の構造上自力で深々と刺さった矢を抜くことは出来ない。 それでも、体を捩ったり、近くの石に矢をぶつけたりと試行錯誤するが、やはり徒労に終わってしまう。 それどころか体内で矢の先端が動き、餡子を引っ掻き回したために余計な痛みを味わう羽目になった。 「ゆぐ・・・いぢゃいぃ、いぢゃいよぉ・・・」 しかし、泣き声がゆっくりにしては妙に小さい。 本来なら小さな体を目いっぱい使って信じられない大声で泣きじゃくるはずなのに。 子れいむはすすり泣く、といった表現が相応しい控えめな声で泣いている。 「ゆえーん、ゆえー・・・ゆぎっ」 どうやら、泣くだけでも餡子や矢が動いてしまい激痛が走るらしい。 痛みを耐え切れずぽろぽろと涙を流すその表情が時々苦痛によって歪んでいた。 「ゆっぐ・・・もうやだ、おうちかえる」 しばらく泣きじゃくっていた子れいむはそう叫びながら巣に戻るために飛び跳ねた。 そして、着地した瞬間に衝撃で矢が動き、また苦痛に顔を歪めた。 もちろん、矢は刺さった後に飛び出す特殊な返しのおかげで抜けることなく刺さったまま。 「ゆ゛っ・・・ゆっぐちしたいよー・・・」 結局、子れいむは跳ねて移動することを諦め、ゆっくりと地べたを這いずって巣へと戻っていった。 「おかーしゃあん・・・いぢゃ、いぢゃいよぉ!」 「おちびちゃん!ゆっくりだよ、ゆっくりしてね!?」 「ゆっぎぢできないよぉ!とって!はやくとってー!」 数時間後、幸いにも日が暮れる前に巣に戻った子れいむは母れいむに矢を取ってもらおうとしていた。 しかし、母れいむが矢を少し動かすだけで激痛が走ってしまい、彼女は大泣きしてしまう。 そのせいで子どもに甘い母れいむは娘が痛がるのに無理に引き抜くことが出来ず、右往左往。 「おがーぢゃん!どっぢぇ!はやぎゅどっぢぇー!?」 「ゆぅ・・・おにぇーちゃん!ゆっくち、ゆっくちだよ!」 「ゆっくち!ゆっきゅちちていっちぇね!」 「ゆっくりぢでいっでね、ゆぎぃ!?」 泣きじゃくる子れいむの周りで母れいむと一緒に右往左往しているのは妹のれいむとまりさ。 当然、彼女達に何かが出来るはずもなく、子れいむにつられて泣き出してしまった。 「ゆぅ・・・わがらないよぉ!れいぶ、ゆっぐぢでぎないよおぉぉ!?」 そればかりか、とうとう母れいむまで泣き出してしまった。 慰めるものもおらず、ただひたすら泣きじゃくるれいむ一家。 一家の大黒柱のまりさが帰ってきたとき、彼女達はようやく泣き止んだ。 「ゆゆっ!ゆっくりりかいしたよ!まりさがぬいてあげるね!」 事情を聞いたまりさの動作は素早かった。 すぐさま子れいむに刺さった矢の露出している息を受ける部分を咥えると思いっきり引っ張った。 「ゆぎゅぅぅぅうぅううぅぅう・・・!?」 当然、返しに阻まれて簡単には抜けず、子れいむは尋常でない痛みのせいで悲鳴をあげることすら出来ない。 ただ歯を食いしばりながら大量の涙で水溜りを作るばかり。 しかし、そんな地獄の苦しみも永遠に続くはずがなく、数十秒後には解放された。 「ゆっ!」 「ゆ゛ぐぅ!?」 まりさが引き抜いた矢には返しが4つ、ちょうど十字に見えるように付いている。 それはつまり、それが子れいむの体から引き抜かれたことを意味していた。 「ゆ゛っ・・・!ゆ゛っゆ゛っ・・・!?」 大きな口を両断され、底部をべろんとめくられた子れいむはまるで口が3つあるように見える。 その傷はあまりに大きく、そしてあまりに深かった。成体ならまだしも、子どもにとっては確実に致命傷。 現に傷口から餡子を撒き散らした子れいむは白目を剥いて、割れた口から危険信号といわれる「ゆ゛っ」という嗚咽を漏らしていた。 「ゆゆっ!おちびぢゃん!ゆっぐぢ、ゆっぐぢぃー!」 「おにぇーちゃああん、ゆっきゅちー!ゆっきゅちー!」 「まりさのおぢびぢゃん!ゆっぐぢぢぢゃだべだよおおおお!ゆっぐぢー! 「もっぢょ・・・ゆっくちちたかったよ・・・」 異常に気付いた両親は必死に子れいむを励まして、傷口を舐めたが何の意味もなさず、子れいむは息絶えた。 「れ、れいぶのおぢびぢゃんがああああああああああ!?」 「ゆえええええん!おぢびぢゃあああああああああん!?」 悲嘆に暮れるれいむとまりさ。 しかし、彼女達にはゆっくり絶望する暇すら与えられない。 「ゆき゛ゅ!?」「い゛っ!?」 短く悲鳴を上げたのは姉を失い、母親同様に悲しんでいた赤れいむと赤まりさ。 赤れいむののこめかみと赤まりさの後頭部には先ほど子れいむの命を奪ったあの矢が突き刺さっていた。 ---あとがき--- ありそうであんまりなかった矢ゆっくり。 文字通り矢が刺さったままになっているゆっくりです。 動くと激痛、抜くと死ぬ、放っておくと狩りなんてまず出来ない。 こんな有様の赤ゆっくり2匹を抱えて生きていくこの一家の行く末は・・・ たいちょさんが書いてくれるらしいです( byゆっくりボールマン
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/470.html
前編へ 「ゆっくりしていってね!」 「「「ゆっくりしていってね!」」」 真夏の太陽を天に抱いた森の中、ゆっくりたちの声が木霊する。 大人のゆっくりのものが一つと、赤ちゃんゆっくりのものがたくさん。 群生する草を掻き分けて、最近の幻想郷ではよく見かけられるようになった、ゆっくり家族の姿が現れた。 「ゆっゆっ、おひさまきもちいいね!」 「ゆっくりできるね!」 「あ、アリさんがいるよ!」 「むーしゃ、むーしゃ、しあわせー♪」 生まれてまだ間もないであろう、ミニトマト程度の大きさしかない赤ちゃんゆっくりたちは、元気にはしゃぎまわっている。 種類は全てゆっくり霊夢種であり、小さなリボンをはためかせて元気いっぱい飛び回る姿は人間の子供たちと左程変わりない。 そしてそんな微笑ましい光景を、後ろから優しい顔つきで見つめるゆっくりが一匹。 「あまり遠くに行かないでね!」 ゆっくり魔理沙だった。 バレーボール程度もある身体を揺らして、四方八方に行こうとする自らの子供たちに注意を向けている。 「おかあさん、アリさんいっしょにたべよ!」 「お母さんはだいじょうぶだよ! みんなで食べるといいよ!」 「わーい♪」 「ゆっくりたべるね!」 「おかあさんだいすき!」 列を成して歩くアリの集団を見つけた赤ちゃんゆっくりたちは、小さな舌を伸ばしてアリを食べ始める。 近くに湖が存在し、生き物がたくさん生息しているこの場所は、ゆっくりたちが過ごすには快適すぎるほどのゆっくりスポットだった。 幸せそうにアリを頬張る赤ちゃんゆっくりたちの姿を慈愛の表情で見つめるゆっくり魔理沙。 その左頬は、他のゆっくり魔理沙と比べて、ほんの少しだけ歪な形をしていた。 二週間前、人間の手によって失われ、そして再生した結果だった。 そう――このゆっくり魔理沙は、あの無礼な態度のせいで『お仕置き』されたゆっくりだった。 あの後、怪我による衰弱で意識不明の重態に陥っていたゆっくり魔理沙は、偶然通りがかったゆっくり霊夢に助けられた。 一週間の看病の末、餡子の大半を失っていた身体は万全とはいかないまでも回復。 お礼を兼ねての親愛の表現として身体を寄せ合って揺すり合い、ついムラムラしてそのまま性交に発展してしまった。 助けてくれたゆっくり霊夢は黒ずんで朽ちてしまったが、代わりに可愛い赤ちゃんがなんと七匹も生まれたのだった。 それからゆっくり魔理沙は母として、赤ちゃんたちを育てている。 右も左も分からぬ森の中での生活だったが、暮らし始めてみれば今まで暮らしていた場所より遙かに快適で、既に安住の地と化している。 あの男が言っていた野良犬やゆっくりれみりゃ、ゆっくりアリスの姿も見かけない。 ……あの男。 顔を思い出す度に、ゆっくり魔理沙の左頬がじくじくと痛み出す。 あの男には酷いことをされた。 ――しかし、あの男を怒らせるようなことを、自分は仕出かしてしまったのだ。 そう考えるゆっくり魔理沙。別に知能が上がったわけではなく、単にトラウマが生じているだけなのだが、本人はそのことに気付いていない。 ――今でも怒っているのだろうか。 あれ以来、人里には近付いていない。場所が分からないということもあるが、近付いてあの時と同じような目に合いたいとは、二度と思わなかった。 「おかあさん!」 思考に没頭していたせいか、ゆっくり魔理沙は自分の子供が目の前に来ていたことに気付かなかった。 慌てて思考を中段し、微笑みを作る。 「ゆっ、どうしたの?」 「みてみて、アリさん!」 赤ちゃんゆっくり霊夢が舌をべっと伸ばす。その先には、踏まれてぺしゃんこになったアリの死骸がくっついていた。 「えらいね! ちゃんととれたんだね!」 「ゆゆっ♪」 褒められたことが嬉しいのだろう、赤ちゃんゆっくり霊夢はその場で踊るように飛び回る。 その愛らしい姿を見て、ふと電撃のような閃きがゆっくり魔理沙の脳裏に浮かんだ。 この可愛い赤ちゃんたちを見れば、きっとあの男も許してくれるに違いない! それは人間からすれば何とも愚かな考えだったが、今のゆっくり魔理沙にとって天啓ともいえる閃きだった。 早速赤ちゃんたちを全員呼び集め、高らかに宣言する。 「今からお兄さんのおうちへしゅっぱつするよ!」 「ゆ?」 「おにいさんってだれ?」 「ゆっくりできるの?」 「とてもゆっくりできるよ! おいしい食べ物があるし、れいむたちよりも大きなれいむもいるよ!」 「ゆゆっ!?」 「いきたい!」 大はしゃぎする赤ちゃんゆっくりたち。「ゆっ♪」「ゆっ♪」と楽しげにその場で飛び跳ねている。 それが静まるのを待ってから、ゆっくり魔理沙は記憶を頼りに道を歩み始めた。 「それじゃ、ゆっくり行こうね!」 「「「ゆっくりいこうね!!!」」」 時は少し遡り、早朝。 俺は知人の美鈴さんから習った太極拳を練習していた。 別に拳法に目覚めたわけではなく、ここのところ働き詰めだったので、健康のためにやっているだけだ。 ゆっくり魔理沙に『お仕置き』してから一週間くらい経ったころだろうか、俺の勤め先でちょっとしたトラブルが生じた。 それ自体は解決したのだが、それの尻拭いのために俺や同僚たちは朝から深夜までずっと駆り出され、今日まで一週間ずっと働きっぱなしだったのだ。 おかげでゆっくり霊夢には寂しい思いをさせてしまった。こういうとき、畑仕事をしている人が羨ましいと思ったりもする。 だけどまぁ、五年前に外の世界から迷い込んできた外来人である俺に土地なんてあるはずもなく、こうして家を持てただけでも大したものなのだろう。 「……ゆ?」 ゆっくり霊夢が眠りから目覚めたようだ。きょろきょろ周囲を見渡し、俺と目が合うや否や、 「ゆっくりしていってね!」 とお決まりの挨拶。 うぅん、相変わらずぷりちーなナマモノだ。 頬ずりしたくなる衝動をグッと堪えて、朝食の準備に取り掛かる。 その間ゆっくり霊夢はずりずりと腹ばいで俺の足元に近付き、ずっと身体を摺り寄せていた。 普段こいつが起きる前に家を出ていたので、久しぶりのスキンシップが取りたいのだろうか。 萌え死ぬ。 足の親指で頬のあたりをくすぐってやりながら、てきぱきと料理を作る。 外の世界のガスコンロと比べて竈は使い辛い(そもそも使ったことが無かった)が、今ではすっかり慣れたものだ。 今日は夕飯にも再利用出来るシチューを作る。 器に注ぎ、おひたしに鰹節を振りかけて醤油をかけた皿と丁度炊き上がったお米を並べて完成。 テーブルの上に乗せ、少量を別の皿によそうと、ゆっくり霊夢が食べやすいように床に置いた。 「いただきます」 「ゆっくりいただくね!」 ゆっくり霊夢は舌を器用に使い、零さず綺麗にご飯を平らげる。うーん、美しい。 おっと、感心してないで俺も早く食べなくてはな。 外の世界にいた頃と比べてずいぶん質素になった朝食を手早く食べ終え、皿を水の入った桶につけておく。帰ったら洗おう。 「じゃあ、行ってくる。今日は通常業務だからいつもの時間に帰れるよ」 「ゆっ、本当!?」 「ああ。それに明日はお休みも貰っている。一緒に遊ぼうな」 「ゆっくり待ってるね!」 ゆっくり霊夢に見送られながら、俺は家の扉を閉めようとして―― ごしゃん。 「……」 忙しくて修理する暇のなかった扉が、ついにご臨終なされたようだった。 なんか変な方向に曲がっており、動かそうとしてもビクともしない。 どうしよう、時間をかければ直せそうではあるが、そうすると仕事の開始時間に間に合わない。 扉は中途半端に開いたままだ。別に泥棒に盗られて困る貴重品はないが、野犬やゆっくりたちが入り込んでくる可能性もある。 仕方無いので、雨漏りの修理用に何本かストックしてある木の板を裏から持ってきて、扉の前に置いた。 あとは野犬の目の高さくらいの位置にいらなくなった新聞紙を米を糊代わりにしてくっつける。 突撃されたらすぐ剥がれてしまうが、多少の目眩ましにはなるだろう。 「いいか、知らない人が来ても追い返すんだぞ。お前のリボンにつけたペット証があれば、誰もお前を傷付けないからな」 「わかったよ!」 ちょっと心配だったが、仕事はしないといけない。 俺は何度も振り返りつつ、家を後にした。 時間は過ぎて、三時を過ぎたころ。 ゆっくり霊夢が主人の作ってくれた手製の滑り台で遊んでいると、何処からか自分を呼ぶ声が聞こえた。 どうやら玄関の方かららしい。この家に来客は滅多に来ないので、ゆっくり霊夢は多少警戒しながら扉に近付いた。 「ゆっ、誰かいるの?」 「れいむ! まりさだよ!」 「ゆゆっ、まりさ!?」 聞こえた声は、懐かしい知人のものだった。 二週間前、たった一日だけ遊んだ友達。主人から家に帰ったと聞かされて残念な思いをした記憶が蘇る。 板と新聞紙の隙間から外を覗くと、確かに見覚えのあるゆっくり魔理沙の姿があった。 「どうしてここに?」 「遊びに来たよ! ゆっくりさせてね!」 「ゆゆっ! ゆっくりしていっ……ん……」 「……? れいむ、どうかしたの?」 ゆっくりしていってね、とお決まりの台詞が聞けると思ったゆっくり魔理沙は、訝しげな視線をゆっくり霊夢に送る。 ゆっくり霊夢を引き止めたのは、主人が出かける前に言った言葉だった。 『知らない人が来ても追い返すんだぞ』 何者かがこの家に来たのなら、自分は追い返さなければならない。 しかし…… 「ゆっくり入れてよ! れいむに見せたいこどもたちもいるんだよ!」 「ゆっ、子供!?」 ゆっくりとしての本能を刺激する単語に、ゆっくり霊夢はぴくりと反応して顔を上げた。 「そうだよ! みんな、れいむにあいさつするんだよ!」 ゆっくり魔理沙の言葉に、板の向こうから赤ちゃん特有の甲高い声が幾重にも折り重なって唱和された。 「ゆっくりしていってね!」 「おねえちゃん、おかおがみえないよ!」 「はやくいれてね!」 「そこはゆっくりできるところなの?」 「ゆっくりさせてね!」 ゆー、ゆーと甘い鳴き声。ゆっくり霊夢は理性と本能のせめぎ合いでおろおろする。 主人は、ゆっくり魔理沙たちが部屋に入ることを是としないだろう。 しかし、赤ちゃんたちを見たい衝動が心の内よりどんどん溢れてくる。 主人への忠節を取るか、自身の抑えがたい興味を優先させるか。 悩みに悩んで、ゆっくり霊夢が取った行動は、 「今、この板をどけるよ! ゆっくり下がってね!」 ゆっくり魔理沙たちは知らないゆっくりじゃないから大丈夫だという、後先を考えない愚者の選択だった。 「おねえちゃん!」 「ゆっくりしていくね!」 「ゆっ、ゆっ♪」 赤ちゃんゆっくりたちに纏わり付かれながら、ゆっくり霊夢は幸せだった。 加工所で生まれ、この家に引き取られてからずっと、ゆっくり霊夢は赤ちゃんというものを見たことがなかった。 ペット用のゆっくりは英才教育を受けるために誕生してすぐ親元から引き離され、ゆっくりブリーダーと呼ばれる人間の下で厳しい訓練を受けることになる。 だが、生まれたばかりの蜂が教わらなくても狩りの仕方を熟知しているように、種族の本能的な部分は親と子の愛情関係を完全に理解していた。 赤ちゃんゆっくりたちを見てゆっくり霊夢の中に浮かんでくる感情は、間違いなく『愛』と呼ばれるものだった。 「うわー、すごいね! ゆっくりできるものがたくさんあるよ!」 「みんなでゆっくりしようね!」 ゆっくり赤ちゃんたちは大はしゃぎで、家の中を飛び回っている。 特に目を引いたのは、主人がゆっくり霊夢のために作ってあげた手製の玩具の類だった。 滑り台にブランコ、蛙人形やシーソーなど、さながら小さな遊園地といった風情である。 赤ちゃんゆっくりたちは玩具に駆け寄ると、思う存分ゆっくりし始めた。 列を作り、順番に滑り台を滑り。 ブランコに乗って、どちらがより高い場所まで行けるか競い合い。 蛙人形に群がって、ゆっくりれみりゃ退治ごっこをして。 シーソーを使って、自分の身体が沈んだり持ち上がったりする感覚を楽しんだ。 生まれて一週間、森の中でこんな遊びをしたことはなかったのだろう。赤ちゃんゆっくりたちは終始はしゃぎっぱなしだった。 ゆっくり霊夢もそんな赤ちゃんたちに付き添うように遊んでいたのだが、 「ゆ~……ふぁ……」 急に眠気を感じ、ふらふらと壁にもたれかかってしまった。 今日までの一週間、ずっと帰りの遅い主人を待ち続け、早く寝ないで夜遅くまで待っていた結果がこれだった。 眠ってはいけないと思いつつ、意識が闇の中へと沈んでいく。 やがてくぅくぅと寝息を立て始めたのを、離れて赤ちゃんゆっくりたちを見守っていたゆっくり魔理沙が発見した。 「れいむ、れいむ?」 「ゆっ……くぅ……」 揺すっても起きない。 赤ちゃんゆっくりたちが、心配したかのように駆け寄って来る。 「おかあさん、おねえちゃんどうしたの?」 「つかれて眠っちゃってるだけだよ! しんぱいしないでゆっくり遊んでてね!」 ゆっくり魔理沙はゆっくり霊夢は起きないよう、小さな声で告げる。 だが赤ちゃんゆっくりたちは動かない。集まってきたのは、ゆっくり霊夢が心配だったからだけではないからだ。 「おかあさん、おなかすいたよ!」 「なにかたべさせてね!」 朝食の蟻を食べてから、この家に来るまでずっと移動中だったゆっくり魔理沙たちは、その間何も口に入れていなかった。 それに加えて、今激しい運動をしてきたばかりである。 空腹を訴えるのも当然の行動だった。 「ちょっと待ってね! お兄さんが帰ってこないと……ゆっ?」 言葉の途中で、ゆっくり魔理沙は鼻をひくつかせる。 漂ってくる、いい匂い。 食欲を促すその香りは、台所の竈の上に置いてある鍋のほうからしていた。 「あっちに、ご飯があるよ!」 ゆっくり魔理沙は竈のほうへと近付いた。 そこにはこの家の主人が今朝方作ったシチューの入った鍋がある。 だが、鍋はかなり高い位置に置かれており、普通は届く距離ではない。 ただ竈は角の部分が先に行くほど少しずつ丸みを帯びていく構造になっており、角の先端はゆっくりにとってただの坂と呼んでも差し支えない形状になっている。 あの部分まで飛ぶことが出来れば、鍋に届くかもしれなかった。 「いくよ!」 ゆっくり魔理沙は助走をつけ、竈の少し手前で思い切りジャンプした。 浮遊感。一瞬の空白の後、坂道の部分にギリギリ身体が届いた。 間髪入れず、もう一度ジャンプしようとする。 だが坂道での踏ん張りが効かずにバランスを崩し、そのまま床に落下してしまった。 「ゆぶっ!」 衝撃。口から餡子が少しはみ出る。 「おかあさーん!」 赤ちゃんゆっくりたちが心配して駆け寄ろうとするのを、ゆっくり魔理沙は静かに押し留めた。 「だ、大丈夫だよ! ゆっくりそこで見ててね!」 ゆっくり魔理沙は何事もなかったかのようにニッコリ笑うと、もう一度チャレンジするために距離を取る。 無論、痛くないわけではないが、それでも子供たちを心配させないために我慢しなくてはならない。 それは親になったゆっくりとしての本能だった。 「……ゆっ!」 気を落ち着かせ、もう一度トライ。タイミングを見計らって、竈の坂道へ一直線に跳躍する。 べしゃっ、と身体が押し付けられる感覚。その感覚を維持したまま、ゆっくり魔理沙はもう一度ジャンプした。 一瞬の緊張。果たして自分はどうなった? 答えは、身体に触れる床の感触で分かった。 ゆっくり魔理沙は、見事に竈の上に着地していたのだった。 「ゆっ! ゆっ!!」 「おかあさん、すごい!」 遙か下方で、赤ちゃんゆっくりたちがやんややんやの喝采を母親に送る。 その声に満足しながら、ゆっくり魔理沙は鍋に近付いた。 この鍋を持って床に降ろすのは、物理的に不可能だということくらいゆっくり魔理沙の知能でも分かった。 ならば、方法は一つしかない。 「ゆっくり落ちていってね!」 体当たり。がん、という衝撃と共に鍋の位置が少しずれる。 もう一度アタック。ずず、ずず……と少しずつ鍋がぐらつき、そして…… がしゃーーーん!!! 豪快な音を立てて、鍋が竈から転がり落ちた。 床にぶちまけられるシチュー。掃除するのにかなり苦労することになるだろうが、無論ゆっくりたちはそんなこと知ったことではない。 赤ちゃんゆっくりたちは歓声を上げてシチューに群がり、ぱくぱく食べ始める。 「ゆっゆっ、つめたいけどおいしいね!」 「むーしゃ、むーしゃ、しあわせー♪」 「うっめ!!! メッチャうっめこれ!!!」 その様子を幸せそうに眺めていたゆっくり魔理沙は、床に水の入った桶が置いてあるのを発見した。 後で皿を洗うために浸けていたものだが、ゆっくり魔理沙にとってその桶は飲み水にしか見えなかった。 「みんな、お水もあるよ!」 地面に慎重に下りると、ゆっくり魔理沙は躊躇無く桶も引っくり返す。 水が一面に溢れ出し、勢いよく流れ出た皿は地面を擦って何筋もの傷を付けた。 「ゆゆっ、ちべたーい!」 「おみず、きもちいいね!」 「ごくごく、おいしーい♪」 赤ちゃんゆっくりたちは大はしゃぎ。風呂代わりに水浴びしたりするゆっくりまで現れる。 皆にとって、ここは最高にゆっくり出来る環境だった。 「……ゆっ!? みんな、何してるの!?」 と。 先程鍋を落とした音で目を覚ましたゆっくり霊夢は、台所の惨状を見て驚愕の声を上げた。 「あ、れいむ!」 ゆっくり魔理沙はぴょんぴょん飛び跳ね、フリーズしているゆっくり霊夢に近寄る。 そしていかにも自分は幸福です、というような顔で、 「おにいさんがまりさたちのために用意してくれたばんごはん、美味しいね!」 「……」 ゆっくり霊夢は口をぱくぱくさせるだけで反応しない。 「……? どうしたの、れいむ?」 不審そうな表情を浮かべるゆっくり魔理沙。気付いた赤ちゃんゆっくりたちも二匹の周囲に駆け寄った。 「おねえちゃん、どうしたの?」 「ゆっくりしていってね!」 「おねえちゃんのぶんもまだあるよ!」 悪意のない赤ちゃんゆっくりたちの言葉。 ゆっくり霊夢は何とか餡子の底から声を絞り出そうとして、 「ゆっくり霊夢っ!!!」 叫び声と、ぶち壊す勢いで開けられた扉の音にびくりと身体を硬直させた。 それは、ゆっくりが進入しないように置いておいた板が外れているのを発見し、慌てて帰宅した主人の声だった。 「ゆっ……ゆっ!?」 これはマズい、とゆっくり霊夢は思った。 何がマズいのかは分からなかったが、とにかく本能的な危険をゆっくり霊夢は感じていた。 どたどたという足音、そして、 「ゆっくりれいっ……む……」 惨状を見つけてしまう。 目を見開き、硬直する主人。 ゆっくり霊夢は固まったまま反応出来ない。 「……ゆっ!」 だが、大きな声に少し驚いたゆっくり魔理沙は、自分がここに来た目的を思い出した。 「みんな、来て!」 「ゆっ?」 「おかあさん、どうしたの?」 突然闖入してきた初めて見る人間の姿を興味津々に眺めていた赤ちゃんゆっくりたちは、母の言葉を受けてゆっくり魔理沙の周囲に集まる。 「みんな、お兄さんに『挨拶』するんだよ!」 「「「ゆっ!!!」」」 朝、ここに来る道中で母に教わった『挨拶』。 赤ちゃんゆっくりたちはぽかんと口を開けっぱなしの男に向かって、精一杯の愛らしい顔で、 「「「ゆっくりしていくね!」」」 言った。 ゆっくり魔理沙は順繰りに赤ちゃんたちを見渡し、 「お兄さん、この前はごめんね! 赤ちゃんたちをとくべつにかわいがっていいから許してね!」 そして、 「だから、みんなでここに住まわせてね!」 その日、ゆっくり霊夢はゆっくりれみりゃやゆっくりフランなど足元にも及ばない恐怖を味わった。 それはいつかの『お仕置き』すらも凌駕する、圧倒的なまでの修羅の形相だった。 「おにいさん、ここからだして!」 「おなかすいたよ!」 「ここじゃゆっくりできないよ、おうちかえる!」 赤ちゃんゆっくりたちの声。 俺はいらついた風を装い、ゆっくりたちを閉じ込めた透明の箱を蹴り上げる。 「五月蝿い、殺されないだけありがたく思え!!!」 「ゆゆっ!!?」 衝撃と振動。 赤ちゃんゆっくりたちは怯えて隅に固まり、震えながら泣き出してしまった。 「やめてね! 赤ちゃんたちに酷いことしないでね!!」 と、こっちはゆっくり魔理沙。 赤ちゃんゆっくりたちを入れた箱とは別の小さな透明の箱に詰められ、ずいぶんと苦しそうだ。 子供たちを庇おうとするその姿勢は、いつかの自分勝手な姿からは想像出来なくて少し吃驚する。 「お兄さん、まりさたちを許してあげて!」 更に別の箱、こちらは少し空間のゆとりがある透明の箱の中で、ゆっくりれいむは俺に温情を訴えかける。 ゆっくり魔理沙たちを家の中に入れてしまった罪で閉じ込められてなお、友達の安否を気遣うとは……流石我がペット。 ぶっちゃけた話、俺は別にそこまで怒り心頭というわけではなかったりする。 確かにあの惨状を目にした瞬間、ちょっと怒りの沸騰点が限界を超えかけた。 でもそこを鋼の精神でぐっと堪え、ゆっくりたちを閉じ込めるだけに留めている。 何故殺さなかったのか? 勿論『殺害』という直接的な攻撃を俺が嫌っているというのもある。 だがそれ以上に、 「ほーれほれ」 「ゆゆっ!? お、おかあさーん!」 「ゆっくりやめてね! 赤ちゃんを放してね!!!」 こいつらの泣き叫ぶ声と必死の表情が、最高に俺の心を満たしてくれる。 殺してしまったら、この愉悦は味わうことは出来ない。 自分の唇がすごい勢いでひん曲がっているのを感じる。 蓋を少し開き、赤ちゃんゆっくりの一匹を掴み上げた。 ああ、ゆっくり魔理沙の懸命な顔……そそる。 「しかしぷにぷにしてんなー、こいつ」 掌に乗せた赤ちゃんゆっくりの頬を突く。 最初は優しく、そして少しずつ力を込めて。 「ゆ、ゆゆっ、いたいよ! ゆっくりできないよ!!!」 最初はくすぐったそうにしていた赤ちゃんゆっくり霊夢だったが、力が入ると苦しそうな声を上げた。 その様子を見て、ゆっくり魔理沙が半狂乱で泣き叫ぶ。 「な゛ん゛でごん゛な゛ごどずる゛の゛ぉ゛ぉぉぉぉ!!?」 「何故? 分からないのか?」 いつかのような質問。あの時の痛みを思い出したのか、ゆっくり魔理沙がびくりと震える。 「ここは、誰の家だ?」 「お……お兄さんのおうちです……」 おぉ、覚えていたか。感心感心。 「で、お前は何をしていた?」 「あそんでました……」 「それは別に構わん。その次だ」 「お兄さんが用意してくれたおゆうはんを」 「違う」 赤ちゃんゆっくり霊夢にデコピン。 結構本気で叩いたからか、「ゆ゛ーっ!!!」と泣き出してしまった赤ちゃんの姿を見て、慌ててゆっくり魔理沙が訂正する。 「まりさたちのじゃないおゆうはんを勝手に食べてしまいました!」 「そして?」 「お水も勝手に飲んでしまいました!」 「ふむ」 もう一度デコピン。赤ちゃんゆっくり霊夢の泣き声が激しさを増す。 ゆっくり魔理沙は俺の動きを止めようと必死に箱をガタガタ揺らした。 無駄な努力ご苦労さん。 「さっき言ったよな? ここは俺の家だって」 「そ、そうです、だから赤ちゃんをゆっくり放してね!」 「あ?」 「は、放してください!」 ゆっくりが敬語を使ってるのは面白いなぁ。 「で、お前は人の家で、俺が俺のために作ったシチューを床にぶちまけたわけだ? お前の都合のために?」 「あやまります! あやまりますからまりさの赤ちゃんにひどいことしないでぇぇぇ!!!」 ゆっくり魔理沙の顔はもう涙で皮がべちょべちょになっていた。 うはぁ、やべぇ。超快感。 だけど台所の掃除と扉の修理で時間を使いすぎた。 はっきり言って俺は眠い。 今日はゆっくり魔理沙に『絶望』を知ってもらうだけで終わらせてしまうか。 俺は泣きながら俺の手を逃れようとする赤ちゃんゆっくり霊夢を指で掴むと、 「あーん」 「ゆ゛ゆ゛っ!!?」 大きく口を開き、奥歯に挟んだ。 「や゛め゛でぇ゛ぇ゛ぇ゛ぇぇ゛ぇ゛ぇ!!!」 そんなに騒がなくても食わないよ。 まだ。 俺は奥歯に挟んだ赤ちゃんゆっくりを見せ付けるように、ゆっくり魔理沙と他の赤ちゃんゆっくりたち、そしてゆっくり霊夢の箱を順繰りに回る。 「いいか、今からお前に問題を出す」 うっ、しゃべりづらい。 「お前が十秒以内に答えられたら子供は助けてやる。答えられなかったら子供は食われる。分かったな?」 「わ、わかったからいそいでもんだい出してね!」 歯と歯の間で母の名を呼びながら泣き叫ぶ(口の中に振動が起きて少し気持ち悪い……)赤ちゃんゆっくりを見つめて、ゆっくり魔理沙は俺を急かす。 おやおや、ゆっくりのくせにゆっくりしないでいいのかな? まぁいいや。 「問題。ゆっくり魔理沙には七匹の子供がいます。ある日ゆっくりれみりゃに襲われて二匹殺されてしまいました――」 逃げた先でゆっくりフランの群れに遭遇してしまい、また二匹無残に殺害されました。 更に発情期のゆっくりアリスと出会ってしまい、ゆっくり魔理沙は子供の一匹を犠牲にして逃れました。 しかし家に帰ると、そこはゆっくり霊夢の一家に占拠されていました。 ゆっくり霊夢たちに押し潰され、また一匹子供が死んでしまいました。 そうこうしてるうちにお腹が空いてしまったゆっくり魔理沙は、残った子供をぺろりと食べてしまいました。 さて、子供は現在何匹残っているでしょう――? 「ゆっ!? ゆ、ゆっくり……」 ゆっくり魔理沙は顔を顰めて考え出す。 くくく、所詮ゆっくりブレイン、答えられまい。 しかもゆっくりれみりゃなどの天敵の名前をわざわざ出している。本能的な恐怖で冷静な思考なで出来ようはずもない。 「なーな、ろーく」 「ま、まってね! ゆっくりかぞえてね!」 「ごー」 焦ってるゆっくり魔理沙も可愛いなぁ。 その頬を引っ張りたい。 「さーん、にー」 「ゆゆゆゆっくりしてね!!! ゆっくりして」 「いーち」 「ゆ……う゛わ゛あ゛あ"ああぁ゛ぁぁ゛ぁ゛ぁぁぁ゛!!!」 「ぜろー、残念でしたー」 やっぱり無理だったか。 ゆっくり魔理沙は何とかしようと、目に見えて暴れ出した。 だが狭い箱の中、己を苦しめるだけだ。 俺は口の中から聞こえる赤ちゃんゆっくり霊夢の泣き声を聞きながら、他の赤ちゃんゆっくりたちを閉じ込めた箱の前に移動した。 「おにいさん、なんでこんなひどいことするの!?」 「はなして! いもうとをはなしてね!」 「ゆっくりできないおにいさんはゆっくりしんでね!」 口々に喚きたてる赤ちゃんゆっくりたち。だけど俺が箱を蹴ると大人しくなる。 「非常に残念だが、こいつは死ぬ。あーあ、残念だなぁ。お前たちのお母さんがちゃんと問題に答えられてれば、こいつも助かったのになぁ」 まるでゆっくり魔理沙が全て悪いような言い方。 勿論、どう考えても悪いのは俺なのだが、ゆっくりの餡子脳ではそんなこと分かるはずもあるまい。 「お前たちのお母さんのせいでこいつは死ぬのかぁ。あーあ。酷い親だよなぁ」 「ゆっ!?」 「そんな、おかあさん!?」 赤ちゃんゆっくりたちが一斉に母親の方を振り向く。 ゆっくり魔理沙は違うと言いたげに身体を少しだけ揺らした。本当は首を振りたかったのだろうが、箱が狭くて身動きが取れないのだ。 「ち、ちがうよ! おかあさんは赤ちゃんをたすけようとしたよ!」 「それなら赤ちゃんは助かってるはずだよなぁ。もしかしたら、お前たちも見殺しにされるかもなぁ」 論理の破綻した言葉。 だが、それは赤ちゃんゆっくりたちを突き動かす原理になる。 「ひどいよ、おかあさん!」 「ここにつれてきたのもおかあさんだったよね!」 「れいむたちがひどいめにあってるのもおかあさんのせいなんだ!」 「おかあさんはゆっくりしね!」 「「「ゆっくりしね!!! ゆっくりしね!!!」」」 「や゛め゛でぇ゛ぇ゛ぇ゛!!! ぞん゛な゛ごどい゛わ゛な゛い゛でぇ゛ぇ゛ぇぇ!!!」 子供を護ろうと必死だった母親が、護ろうとした子供たちに糾弾されて泣き叫ぶ。 人間ならば同情を誘う光景だが、こいつらはゆっくり。 快感しか生まん。 「さて」 俺は再びゆっくり魔理沙の前に戻り、口の中を見せた。 相変わらず、奥歯に挟まってがたがた震えている赤ちゃんゆっくり霊夢の姿がそこにある。 「こいつを助けたいか?」 「だずげであ゛げでぐだざい゛ぃ゛ぃ!!!」 「うん、でも駄目」 ぷちん。 俺は口を開けたまま、見せ付けるように奥歯で赤ちゃんゆっくり霊夢を押し潰した。 飛び散る餡子。意外と美味しいが、それよりも生命を奪った生理的な罪悪感を覚えてしまうのは俺がゆっくりを愛している所以か。 「う゛わ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛っ゛!!!」 ゆっくり魔理沙のこれ以上ないという悲鳴。 いいね、ゾクゾクする。 先程の罪悪感はそれで消し飛んだ。 さて、じゃあ眠るとするか。 明日は休みだ。 もっと遊ぼうな、ゆっくり魔理沙…… 続く。 このSSに感想を付ける
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/856.html
※fuku2103の続き。人物オリジナル注意 前回のあらすじ ゆっくりできなくなっちゃった★ 第四話「憎しみの炎(笑)終幕」 少年の家の上空を三匹のうーパックが旋回していた。 中にはまりさが二匹、ぱちゅりーが一匹。 しばらくすると少年が庭に出てきた。 少年は箱の中からゆっくりれいむを取り出し、庭に放つ。 れいむの体は遠目から見てもボロボロだった。 皮は垂れ、リボンはあちこちがちぎれ、頭頂部には無数の釘が刺さり、底部は焼かれ、口には歯がなく、片目を失っていた。 うーパック内のぱちゅりー達はその惨状に涙した。 少年はムチのようなものを取り出し、れいむに叩きつける。 それを受けたれいむは必死に這って動いていた。無理矢理マラソンさせているのである。 その様子を見ていたゆっくり達はこう思った。 (れいむをあのにんげんからたすけよう!!!) (れいむをゆっくりさせてあげよう!!!) その決意を胸にうーパック達は森へ帰ろうと進路を向けた。が ただ一匹ぱちゅりーはもう少しだけ様子を見ようとしていた。 俺は昨日から朝早くにれいむを庭で無理矢理はいずり回らせている。 理由なくやらせているわけではない。でも今は秘密だ。 這うのをやめた瞬間俺はムチをれいむの体に走らせる。 「ゆぴゃっ!!!ひゃへへ!!!はひひはひゅうううううううう!!!」 歯がないのでわかりにくいが「やめて!!!はしりますうううううううう!!!」と言っているのだろう。 これくらいなら歯医者じゃなくともわかる。 「おにーちゃーん!」 隣のあの子の声だ。ラジオ体操の帰りなのだろう。 慌ててれいむを縁側の下に蹴っ飛ばす。 「おにーちゃん、なにしてるの?それなーに?」 やべ!ムチ持ったままだった… 「に…にしおかすみこのモノマネだよ!アーーーーーーーーーーーッ!!!」 「あーそっかあ!おにーちゃんじょうずー!」 我ながらナイスだ。 近所を通りかかった人達の視線が痛いが。 ~~~~~~~~さかのぼること二日前~~~~~~~~ まりさはズタボロの体を引きずり、ある場所へ向かっていた。 それは、独り立ちする前日、母まりさから教えられていた場所だった。 「いい!!!まりさ!!!もしもほんとうにゆっくりできないときがきたら、もりのどすまりさにあいにいくんだよ!!!」 「どすまりさ???」 「とってもとってもゆっくりしておおきいまりさだよ!!!どすまりさならどんなゆっくりでもゆっくりさせてくれるよ!!!」 「ゆ?ほんとう???」 「でもほんとうにゆっくりできないとおもったときだからね!!!ゆっくりできるときはたよっちゃだめだよ!!!」 「わかったよ!!!まりさはれいむとゆっくりするよ!!!」 まりさは母親のいいつけを守り、れいむとひたすらゆっくりした。 だがもう一つのいいつけを破り、人里に降りてしまった。 まりさとれいむはその人間をゆっくりさせてあげようとしたが、その人間はゆっくりできなかった。 狭い箱に閉じこめられ、家族は殺されおうちも失い、せっかく出来た子供達は皆殺しにされ、自分自身も酷い目に遭い、れいむはもっと酷い目に遭った上に人間に捕まった。 まりさはゆっくりできなくなった。 今まりさの中にあるのはれいむを助けたいこととあの人間に対する復讐心だけだった。 だからまりさはドスまりさに頼る道を選んだ。 まりさは自分がゆっくりできなくなったことをわかっていた。 だがドスまりさはどんなゆっくりでもゆっくりさせてくれる。その母親の言葉だけを信じ森を駆けるのであった。 しかし痛んだ体についに限界が訪れ、まりさは、森のど真ん中で気を失った。 「ゆ…………」 「ゆっ!!!まりさ!!!きがついたんだね!!!」 まりさが目を覚ますと、そこは見知らぬ洞窟の中だった。 目の前には、心配そうな、だが独特のふてぶてしい表情のれいむがそこにいた。 「れ、れいむっ!!!れいむううううう!!!」 「ゆっ!!!まりさ!!!まだうごいちゃだめだよ!!!ゆっくりおちついてね!!!」 まりさはれいむの姿を見るや飛びつこうとするが制止される。 やがて落ち着きを取り戻し、目の前のれいむが捕まったれいむと別ゆっくりであることに気付く。 「ゆ…れいむ、ここはどこなの…?」 「ここはどすまりさのかくれがだよ!!!まりさはもりのなかでたおれてたかられいむがはこんできたんだよ!!!」 「どすまりさの…」 まりさは倒れた時点で既にドスまりさのテリトリーに入っていたのだ。 そこで食料を集めていたれいむが偶然見つけ、今に至る。 「まりさ、ひどいけがしてるからいまはうごかないでね!!!でもみっかもすればもとどおりうごけるようになるってぱちぇがいってたからね!!! いまはゆっくりがまんして、ゆっくりげんきになってね!!!」 「うん…ゆっくりりかいしたよ…」 本音を言えばまりさはすぐにでも行動を起こしたかった。 だが今の痛みきった体のままでは復讐などとてもできたものではない。 まりさは素直にれいむの言う通り、自身の回復を待つことにした。 人間は「れいむは生かしておく」と言っていたし、何よりこのれいむにはあのれいむの面影があったからだ。 …この期に及んで人間の言うことを信じるあたりやはり餡子脳と言ったところか。 「ゆ…ううううぅぅうぅぅう……」 「いだいよぉおおおぉおぉおぉぉ………」 「ぐるじいよおおぉぉぉぉぉおぉお……」 「むぎゅううぅぅううぅぅうぅぅぅ………」 「ごのままじんじゃうんだね、わがるよ………」 「そんなこといっちゃだめだよ!!!きっとたすかるよ!!!ゆっくりがんばってね!!!」 よく周りを見渡してみると、そこには自分と同じ、もしくはそれ以上の大怪我を負ったゆっくりたちが呻き声を上げており、 それを必死に看護する元気なゆっくりたちの姿があった。 さながら戦時病棟のようである。 「むきゅ……も……だ…め…」 「ぱちぇ!!!ゆっくりがんばってね!!!がんばればきっとゆっくりできるよ!!!」 「ま……りさ……ごめ……むきゅー」 「ぱちぇえ゛え゛え゛ええ゛ぇ゛ぇ゛ぇぇ゛ぇ゛え゛えぇ゛え゛ぇえ゛え!!!」 体の半分近くを失っていたぱちゅりーが今息を引き取った。 ぱちゅりーにしてはよく持った方であろう。それはひとえにゆっくりたちの必死の看護の賜物である。 「ゆ……れいむ……みんなどうしたの?なんだかゆっくりできてないよ……」 「あのみんなはね、にんげんにひどいめにあわされたかわいそうなゆっくりたちだよ!!!ここはそんなゆっくりをゆっくりさせてあげるためのへやなんだよ!!!」 まりさは激怒し、悲しんだ。 自分達と同じ境遇の持ち主がこんなにたくさんいたとは。やはり人間は忌むべき存在だと。 「にんげんはほんとにゆっくりできないいきものだね!!!みんなしねばいいとおもうよ!!!」 「ゆっ!!!まりさ!!!そんなこといっちゃだめだよ!!!」 「どうして!!!みんなにんげんのせいでゆっくりできないんだよ!!!ゆっくりできないにんげんはみんなころせばいいんだよ!!!」 「どう゛じでぞん゛な゛ごどい゛う゛の゛お゛お゛お゛ぉ゛お゛ぉぉ゛ぉ゛お゛おお゛!!!」 まりさとれいむはお互いの言うことが理解できなかった。 何故れいむはそこまで人間をかばうのか。 何故まりさはそこまで人間を殺そうとするのか。 全く理解できなかった。 二匹はお互いの事情を説明した。 まりさは自分たちが人間に受けた酷い仕打ちのこと。 れいむはゆっくりたちが人間に悪さをしたこと、その結果ゆっくりが迫害されたこと。 その他もろもろの事情をお互いに打ち明けた。 「だからしかたがないんだよ!!!これいじょうのひがいをださないためにもにんげんにてをだしちゃだめだよ!!! もしにんげんをころしちゃったりしたら、このさとがゆっくりできないってどすがいってたもん!!!」 「なにいってるの!!!にんげんはゆっくりできないやつなんだよ!!!おもいしらせてやらなくちゃだめなんだよ!!! しかえしされるのがいやならにんげんをみんなころしちゃえばいいんだよ!!!」 もはや「あの」まりさと同一人物とは思えぬ憎しみに満ちた発言。 平和的解決を望むれいむ達ドスサイドと人間達への制裁を望むまりさ。 まりさの不満が爆発し、れいむにこう言い放った。 「じゃあそのどすまりさにあわせてよ!!!したっぱれいむじゃはなしにならないよ!!! どすまりさににんげんがどれほどおそろしいかおしえればきっとわかってくれるよ!!!」 「ゆううぅうぅ……わかったよ!!!じゃあどすまりさにあわせてあげるよ!!! でもどすはきっとみんながゆっくりできないことにさんせいなんてしてくれないよ!!!」 簡単に折れたれいむはボロボロのまりさを丁重にドスまりさの間へと案内した。 ドスまりさは基本的にオープンなので、誰でも謁見できるのだ。 『ゆっ!!!まりさ!!!きがついたんだね!!!よかったね!!!これからはまりさのさとでゆっくりしていってね!!!』 「ゆ…ゆ…ゆっ……!!!」 まりさはドスまりさの大きさにただただ驚愕するしかなかった。あの人間より遙かに大きい。これなら人間に勝てるに違いない。 そう餡子が回ったまりさはすぐさまドスまりさに自分の事情を話した。 『ゆううう…!!!それはつらいめにあったんだね…!!!かわいそうに…!!!』 それを聞いたドスまりさは自分のことのように悲しみ、滝のような涙を流した。 「まりさはれいむをとりかえしてにんげんをころしてやりたいんだよ!!!ゆっくりちからをかしてね!!!」 『な゛に゛い゛っでる゛の゛お゛お゛お゛お゛お゛おお゛ぉ゛ぉお゛ぉぉ゛ぉお゛おお゛ぉ゛ぉぉお゛お゛おお゛!!!』 ドスまりさは絶叫した。 このまりさは何を言っているのだ。「人間を殺す」? そんなことをすれば他の人間によって報復を受け、平和にゆっくりしていたゆっくりは皆殺しにされてしまうだろう。 ゆっくりたちが真にゆっくりできることを望むドスまりさにはそんな考えは理解できなかった。 『にんげんをころしちゃったらゆっくりできないよおおおおお!!!ゆっくりりかいしてね!!!』 「だったらしかえしされないようににんげんをみんなころせばいいんだよ!!!そっちこそゆっくりりかいしてね!!!」 「むきゅー。どす。このまりさはきっとくわしいじじょうをしらないのよ。ゆっくりせつめいしてあげればわかってくれるわ」 ドスまりさの脇からまりさより一回り程大きいぱちゅりーが呟いた。 このぱちゅりーは里の知恵袋としてドスまりさの片腕を担っている。 『そ、そうだね……まりさ、おねがいだからゆっくりきいてね!!!まりさたちがゆっくりできるためのだいじなおはなしだからね!!!』 「ゆ…わかったよ!!!ゆっくりきいてあげるね!!!でもまりさのかんがえはかわらないよ!!!」 「自分達がゆっくりするため」の話なのでまりさは仕方なく聞いてやることにした。 ドスまりさは自分達の事情を話した。 まずは、自身の強さだ。ドスまりさの戦闘力は人間よりも上である。まともにやり合えば人間だろうと簡単に殺してしまえる。 それを聞いたまりさは歓喜した。それならあの人間を殺すことができると。 その後、ドスまりさは何故それほどの力を持ちながら人間に手を出さないのかを説明した。 先程も言ったことだが、人間を殺せば当然その他の人間は黙っていない。 集団でこの一帯のゆっくりを皆殺しにするだろう。 まりさは人間に勝てるなら返り討ちにすればいいと言ったが 集団でかかられればドスと言えど勝ち目がないことを教えた。 以前に集団で襲いかかられ滅ぼされたドスの里があるということも教えた。このドスの里には、その里の生き残りのゆっくりが何匹かいるのだ。 その本人達の話も聞き、まりさは理解したようだった。 一通り話し終え、まりさは言葉を発した。 「ゆっくりりかいしたよ、でもまりさはれいむをたすけたいよ、あのにんげんもころしてやりたいよ。 それさえできればまりさはゆっくりできるよ」 『ゆううぅぅぅうぅぅうううぅ………』 まりさはドスまりさの話が理解できなかったわけではない。ただれいむを助けたい、あの人間を殺してやりたいだけなのだ。 それだけは絶対に譲れなかった。 「むきゅー。どす。ならばようすをみてみましょう。そのにんげんがほんとうにせいさいすべきかどうかたしかめるの。 そのあとどうするかきめればいいわ。それにもしかしたらすきをみてれいむをたすけてあげられるかもしれない」 悩むドスに助言を与えるぱちゅりー。この「制裁」とは「殺す」という意味が含まれているが 野蛮な言葉を嫌うぱちゅりーは「殺す」という単語を使いたくなかった。 『ゆ…!!!そうだね!!! まりさ!!!よくきいてね!!!いまからそのにんげんのおうちのちかくに「てーさつぶたい」をおくるよ!!! そのこたちにようすをみにいってもらうよ!!!そのにんげんをその…ころすかどうかはそのあときめてね!!! もしかしたられいむもたすけてあげられるかもしれないよ!!!』 「ゆ……!ほんとう!!!ゆっくりおねがいするよ!!!」 まりさはその意見に賛成した。「様子を見る」ことには不満があったが「れいむが助かるかもしれない」ことを聞き、期待することにした。 まりさはその人間と家の特徴を覚えている限り教えた。 それを聞いたドスとぱちゅりーは偵察部隊…別のぱちゅりーとまりさ二匹を呼び、すぐに発つよう伝えた。 移動には雇われうーパックに報酬を払う必要があったが、まりさに「うーパックが五匹殺された」ことを聞かされ、タダで乗せてくれることになった。 そして現在に至るのである。 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ (ここででていってもゆっくりところされちゃう!!!) 隙を見てれいむを助けだそうとしたぱちゅりー達だが、常に近くにはあの少年がいる。 隙など見あたらなかった。 「むきゅー。でもだいたいのじじょうははあくできたわ。どすのもとにかえりましょう」 「「「うー!!!うー!!!」」」 「「ゆっくりりかいしたよ!!!」」 他のゆっくりに帰還する旨を伝え、再び庭を見下ろすぱちゅりー。 その時だった。 「むきゅ!?」 庭で少女と話していた少年と目が合った……気がした。 (ど、どうして!?……いいえ、きっとぐうぜんだわ。むきゅー) 自問自答したぱちゅりーはうーパックに指示し、森へと帰って行った。 気づかれないように距離と高度にはちゃんと気を配っている。気づかれるはずがない…そう思った。 「おにーちゃん、どうしたの?おそらになにかあるの?」 「ううん。なんでもないよ。そろそろおうちに帰んな。姉ちゃんが朝飯用意して待ってるぞ」 「そうだね。じゃあまたね、おにーちゃん」 「……………………」 ドスの隠れ家に帰ったぱちゅりー達は少年の家で見たことを全て話した。 まりさはれいむを助けられなかったことに落胆したものの、れいむがまだ生きていたことに安堵した。 それを聞いたドスまりさは考え事をしながら、こう言った。 『ぱちゅりー、そのにんげんの「にんそうがき」をかいてね!!!そのにんげんがなにものかかくにんしたいよ!!!』 「むきゅー。わかりましたわ、どす」 ドスまりさは偵察ぱちゅりーに「人相書き」を描くように指示した。 事情を聞いて、それほどの酷い仕打ちをした人間が何者なのか確かめたかったからだ。それには理由がある。 「むきゅー。かけましたわ」 『どう?ぱちぇ』 「ぱちぇ」とは片腕のぱちゅりーのことである。「ぱちぇ」は最も親しいぱちゅりーに対する呼称なのだ。 「むきゅううううううん!!!まちがいないわ!!!「ひゆっくリスト」なんばー6!!!「ありすごろし」といっちしてるわ!!!」 「「「な、なんだってー!!!」」」 非ゆっくリスト― それは呼んで字の如く「ゆっくりできなくなる」人間のいわゆるブラックリストである。 人相書きはどいつもこいつも子供のラクガキ以下で人間には判別不可能だが、ゆっくりにはわかるようだ。 ドスまりさの里ではゆっくりがゆっくりできるために気を付けるべきの存在のリストを作る傾向がある。 非ゆっくリストのナンバーは危険度により序列されており、少年は6番目に危ない人間として認識されている。 「ありす殺し」というのは少年がゆっくりありすを中心に虐殺を行っていることから名付けられた。 ある時は道ばたでれいむとすっきりしていたありすを殺し、ついでにれいむも殺した。 ある時は集団でとかいは(笑)を気取っていたありすを虐待し、見せ物のごとく磔にされた。 ある時はまりさ一家を集団レイプしていたありすを焼き殺し、とばっちりを受けまりさ一家も全滅した。 ある時はぱちゅりーと本気で愛し合っていたありすをぱちゅりーの目の前でむごたらしく殺した。ぱちゅりーはむきゅむきゅうるさいので殺した。 気がついた時にはこの町一帯からありすが消えていた。 故に少年は「ありす殺し」として恐れられている。 もっと恐ろしいのはこの町にはその少年を上回る虐待派がまだ五人もいることである。 『ゆううぅうぅうう…やっぱり……』 ドスまりさは「そんな気がしていた」といった感じで溜息をついた。 「やっぱりあいつはゆっくりできないんだよ!!!ころしてやろうよ!!!」 ドスまりさはこれまで、「非ゆっくリスト」に乗っている危険人物達に自ら「交渉」していた。 「ゆっくりをゆっくりさせてあげてほしい。わるさをしたゆっくりはどうしてもいい。でもゆっくりしてるだけのゆっくりはゆっくりさせてあげてね」 そう言うと人間たちはみな首を縦に振った。目の前の巨大なドスまりさが怖かったからだ。 だが、リストの1番から10番までの人間たちは虐待派としての「格」が違った。 何人かと交渉してみたが全て破られてしまった。だからトップ10の人間には特に関わらないように注意していた。 ちなみにトップ10の中にはドスまりさを恐れている者も少なくはない。だからあちらからドスの里に直接手を出してくることはなかった。 ドスまりさは考えていた。「まりさとれいむをゆっくりさせてあげる方法」を。 そして、長い思考の後、一つの答えを導き出した。 『…わかったよ!!!そのにんげんに「せいさい」をくわえることをきょかするよ!!! でもあいてはとっぷ10だからね!!!ゆっくりさくせんをたててからじっこうしようね!!! ほかのにんげんにばれないようにきをつけることもかんがえようね!!!』 「ゆっくりりかいしてくれてありがとう!!!そのときにそなえてゆっくりからだをなおすね!!!」 そう言ってまりさは病室へと戻っていった。 「…いいの?どす。にんげんにたたかいをいどむなんて。いままでにきずいてきたすべてがパーになるかもしれないのよ」 『しかたないよ!!!そうでもしないとまりさとれいむがゆっくりできないよ!!!まりさはゆっくりみんなにゆっくりしてほしいだけだよ!!! だいじょうぶ!!!ばれないようにころせばやりかえされないよ!!!うまくいけばみんなもっとゆっくりできるよ!!!』 「むきゅー。そうね」 ドスまりさが人間に手を出さないのは「ゆっくりがゆっくりできなくなるから」だ。 その為に人間達と安定した関係を築いてきた。 真にゆっくりしたいゆっくりは人間に近づかず、悪さをするゆっくりは制裁を受けた。悪いゆっくりはドスから見ればゆっくりできていない。殺されても仕方がないのだ。 だがあのまりさは「悪いゆっくり」ではない。真にゆっくりした結果人間に酷い仕打ちを受けた可哀想なゆっくりだった。 ドスまりさはまりさをゆっくりさせてあげたかった。その為に人間を殺すことを選んだ。 反対する者はいなかった。みな同じ気持ちだったから。 (れいむをあのにんげんからたすけよう!!!) (まりさとれいむをゆっくりさせてあげよう!!!) ドスの里数千匹のゆっくりの心が今、一つになった。 ゆっくりたちはたった二匹の仲間をゆっくりさせてあげたい一心で、命を賭けて戦う決意をした。 戦いの準備をするために、偵察部隊は三日かけて少年を監視し、調査し続けた。 その甲斐あってか、少年は一日に一回決まった時間に人気の無い草原でれいむを枕にして昼寝をしていることがわかった。 その隙にれいむを取り返そうと考えていたが、たった六匹(うーパック含む)で向かっていってもすぐに察知され全滅させられてしまう恐れがあった。 その話を聞いたドスまりさと片腕ぱちゅりーら首脳陣は次の日の同じ時間に作戦を決行することを告げた。 その時ならば他の人間に見つからないし、何より少年が一番油断している時だと考えたからだ。 決行前夜、片腕ぱちゅりーから当日の作戦をゆっくりしっかり伝えられた。 それを全てゆっくり理解した里のゆっくりたちはいつもより多くの食料を用意し晩餐会を開いた。 明日の活力をつけるためと、あまりにも完璧すぎるぱちゅりーの作戦を聞いて勝利を確信し、気の早い祝勝会といったところだ。 「ねえ、おにーちゃん」 「何だい」 俺は隣の家の縁側で女の子と一緒にこの子の姉の切ったスイカを食べている。 お呼ばれされたから来たまでだ。そうじゃなかったらわざわざ夜に外に出たりしない。 「どうしてゆっくりはわるいことするのかな」 「いきなりどうしたんだよ。そんなこと聞いて」 「おねーちゃんとおかいものにいったときにみたんだよ。おさかなくわえたゆっくりがさかなやさんとおいかけっこしてたの」 「それはひどい」 「それだけじゃないよ。たくさんのゆっくりがやおやさんのおやさいみんなたべちゃったの」 「最低だな」 「まえのちぇんだってそうだよ。おうちにはいってきたゆっくりのせいでおほしさまになっちゃった」 …この子が今飼っているちぇんは二代目なのだ。 前のちぇんは留守中に進入した「ゆっくりずむ」なれいむとまりさに殺された。 その二匹は俺が裏でこれ以上ない程の苦しみを与え殺してやった。 そしてちぇんを失ったこの子の悲しみを紛らわすため当時虐待用として飼っていたちぇんを修理し、譲ってあげた。 ちなみにそのちぇんは中のチョコクリームを少し入れ替えたため、俺のことは忘れてしまっている。 「だからね、いつもおもうの。なんでゆっくりはわるいことするのかなって」 「ちぇんはどうなんだ?」 「ちぇんはいいこだよ」 今のも前のも元々ブリーダーに育てられていたヤツだ。当然だろう。 …だが、そうでないゆっくりはどうだ。 この子の大事なちぇんを殺し、他人の家に上がり込み食い物を要求、店の食べ物は平気で盗む、人間にゆっくりを強要する、騒音を出す、ウザい、キモい、ムカつく。 どう考えても害悪でしかない。世の中にはそれらを愛でる愛護団体などというものも存在する。はっきり言って頭がおかしいとしか思えない。 「それはゆっくりが自分のことしか考えてないからだよ」 「?」 「人間だってそうさ。自分のことしか考えてない奴は嫌われるんだ。他人に好かれたかったら、相手のことを理解してあげなくちゃいけない ゆっくりはそんな考えができないから、人間から見て悪いことをするんだよ。しかもそれを悪いこととは思っちゃいないんだ」 「でも、ちぇんみたいないいこもいるよ」 「それは人間が必死に教え込んだからだよ。それでもいい子にならないゆっくりの方がずっと多いんだ」 「そう、なんだ…」 「君はゆっくりが好きなんだね」 「いいこはすきだよ。でもわるいこはきらい。ちぇんをいじめたもん」 「そうだね、みんないい子だったらいいのにね」 本当にそうだよな…性格と、あのツラと、言葉遣いと、デカい声がなけりゃな… ゆっくりはゆっくりすることを求める饅頭だ。 他人がゆっくりできれば自分もゆっくりできる。そう考えている。 だから他人を「ゆっくりさせてあげる」のだ。 そう、全ては「自分がゆっくりするため」。 ゆっくり同士ならそれで「しあわせ~♪」になるが、人間からすれば煩わしいだけである。 故にゆっくりと人間は決して相容れない存在なのである 続く このSSに感想を付ける 選択肢 投票 しあわせー! (35) それなりー (0) つぎにきたいするよ! (1) 名前 コメント すべてのコメントを見る 本家の霊夢と霧雨魔理沙の性格を組み込んだらもっとマシになるよ。 -- (名無し) 2016-11-24 22 22 56
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutau2/pages/1726.html
ほんのりペニマム設定あります ゆっくりの宿 バチバチと大粒の雫が地面を跳ねる。真っ黒な雲に覆われた空からは、まるでバケツを返したような雨がザーザーと降ってくる。 季節はずれの通り雨。いっそのこと濡れて帰ろうかとも思ったが、いささか水遊びをするには寒すぎる。 貼り付いた前髪を絞りながら空を睨んでいると、ふいに足元より声が響いた。 「ゆっくりしていってね!!」 雨音にも負けないよく通る声、挨拶をくれたのはゆっくりまりさ。帽子のつばからは水滴がしたたっている。 「おにいさん、ここじゃゆっくりできないでしょ? まりさたちのやどで ゆっくりしていってね!!」 そう言ったかと思うと裾を咥えて引っ張りはじめる、泥がはねて汚い。 たまらず反射的に足を引く。一瞬ぐにんっと伸びたかと思うと、そのままの勢いでまりさは濡れた地面に突っ伏した。 何やらブクブクとヌタ場の中で蟹のように泡を立てている、新しい遊びだろうか。 「ゆ、ゆえええええええええ!!! なんであじ ひっばるのおおおおお!!!??」 そうして起き上がったかと思うとわんわんと泣きだす。その顔は泥やら涙やらが入り混じって凄いことになっている。 「せっかく、まりさが、おにいさんを、しょうたい、しようと、してる、のにい!!!」 グスグスと嗚咽交じりに訴えてくる。途切れ途切れの言葉を纏めるとこうだ。 何でもこのまりさは宿屋を経営しているらしく、この雨の中立ち尽くす俺を見かねて声を掛けて来たらしい。 ゆっくりの宿屋というものにいささか興味はあったものの、この雨の中をこれ以上歩き回るのは勘弁願いたい。 そんなわけでその旨をまりさに伝える。だが彼女は依然として食い下がる。 「ゆぐっ!? ごはんもだすよ!! おもてなしするよ!! ゆっくりしていってよー!!」 「おきゃくさんつれていかないと れいむにおごられるううぅぅぅ!!」 どうやら俺に声を掛けたのは親切心からでなく、ただの客引きだったらしい。 そんなこと言われると殊更行く気が失せるのだが、雨上がりまでわめかれても面倒だ。 仕方がないので、まりさに案内してくれるよう頼むことにした。 「ゆゆ!! もうおにいさんたら つんでれなんだから!! ほんとうはまりさのおうちで ゆっくりしたかったんでしょう?」 途端、手を返したようにニヤニヤと薄ら笑いを浮かべるまりさ。ちょっとうざい。 そうして俺とまりさは林を奥へと進んでいった。 「ついたよ!! まりさのおやどにようこそ!!」 宿と呼ばれたそこは何の変哲も無い洞窟であった。 特にこれといった装飾もなく、剥き出しの岩がボコボコと殺風景である。 私が唖然としていると奥のほうから数匹のゆっくり達がぽよぽよと跳ねよってきた。 「いらっしゃいませ!! おやどのおかみのれいむだよ!! ゆっくりしていってね!!」 「「「ゆっくりしていってね!!」」」 こいつ等がここの従業員らしい。 「ゆ!? まりさ、どろどろしてばっちいよ!! どろをおとしてからはいってきてね!!」 「おとうさん、ゆっくりしないで はやくおかおをあらってきてね!!」 「ゆぎぃ!!? まりざがんばっでるのにどうじでぞんなごどいうのおおぉぉぉ!!!??」 「どろをとばさないでね!! いいからはやくあらってきてね!!」 自称女将のれいむの剣幕に押され、まりさはすごすごと出口へ向かっていった。 しかし先程の会話を聞いているとどうやらこのゆっくり達は家族らしい。この女将れいむが母親だろうか。 「しつれいしました!! おきゃくさまはきにせずゆっくりしてね!!」 まりさを見送ったれいむがこちらに向き直る。 「きゅうけいと しゅくはくがあるけど、おにいさんはどうするの?」 よく解からないが取り合えず雨が止んだら出て行くと答えた。 「ゆっくりわかったよ!! おだいはいっちまんえんでいいよ!!」 高い。生憎と私の懐には黄色いお札様はいらっしゃらない。 あからさまに渋い顔をすると、れいむは察したのか言葉を続けた。 「いっちまんえんがないなら そこにあるみかんさんでもいいよ!!」 そう言って、れいむは私の籠を見つめながらダラダラと涎を垂らす。 これは先程友人の家を訪ねた際、たくさん成ったからと貰ってきたものだ。 恐らくあのまりさもこのミカンに釣られて来たのだろう。まぁかなりあるし少しくらいなら構わない。 そこで私は、持て成しに満足できたらミカンを分け与えると約束した。 「こうしょうせいりつだよ!! それじゃおちびちゃん、おきゃくさまをおへやまであんないしてね!!」 「ゆっくりわかったよ!! おにいさん、おにもつはこぶからゆっくりわたしてね!!」 そうして女将より一回り小さなれいむが足元まで跳ねてくる。 流石にゆっくりには重いだろうと荷物運びは断ったのだが俄然として聞かない。 「れいむつよいこだからだいじょうぶだもん!! わかったらおにもつわたしてね!!」 ぷんぷんと膨らんで抗議の声をあげる。仕方がないので、俺はミカンの籠を頭の上に乗せてやった。 「ゆべべっ!!? ゆぐ、ゆっぐりはごぶよ・・・」 ぶちゅりと口から空気と餡子を吹き出す。何やら涙目になっているが平気と言うからには平気なのだろう。 ズリズリとナメクジの様に這い進むれいむに連れ歩く。しばらくすると開けた空間に出た。 そこは一面に枯葉が敷き詰められており、至る所にコケシやらダルマやらと統一なく様々なものが置かれていた。 さながら子供の秘密基地といったところだろうか。そう感心する私の傍らでは、ぜえぜえとれいむが虫の息になっていた。 「お、おにいさん・・・れいむ、ゆっくりがんばったよ・・・」 荒い息をつくれいむに、私はありがとうと礼を告げた。するとれいむはにこりと笑った。 「・・・・・・・・・・・・・・・・・」 顎をはって自慢げな顔をしたまま硬直する。まだ何かあるのだろうか? 「・・・れいむゆっくりがんばったよ!! ね!! ね!?」 ああ、そうか。チップが欲しいのか。 とはいえゆっくりの欲しがる物等わからない。取り合えず髪の毛に鼻クソを付けてみた。 「ゆぎゃあああああ!!!?? なにずるのおおおおおお!!!!!」 お気に召さなかったらしい。涙目になりながらズリズリと頭を岩肌に擦り付けている。 そんなれいむを見ているとある物を見つめていることに気付く。 俺はミカンを1つ籠から取り出し、おもむろに皮を剥く。 そうしてその手をれいむの方へ伸ばす、れいむはだらしなく涎を垂らしている。 「ゆあーーーーーぶびぃ!!!??」 絞ったミカンの皮からは勢いよく汁が飛び出し、それは無防備なれいむの顔面に降り注いだ。 「いぎゃああああ!!! れいむのおめめがああああああ!!! ゆっぐりできないいいいい・・・・」 そのままれいむは元来た道を戻っていった。今度はお気に召したようでなによりだ。 そうしてやることも無いので上着の水を切って暇を持て余すこと数分、またもゆっくり達がぽよぽよとやって来た。 ただ今度は皆が皆総じてその頬を大きく膨らませている。その姿はまるでリスか何かのようである。 何事かと見ていると、そのうちの1匹が大きな葉っぱをゆんしょゆんしょと地面に広げていく。芭蕉か何かだろうか。 「おにいさん、これからごはんをよういするよ!! ゆっくりたべていってね!!」 そう言うや否やぺっぺと口から何かを吐き出していく。 まさか食事まで出てくるとは思っていなかった。丁度小腹もすいていたので幸いである。 だが眼前に用意されたメニューはドングリや芋虫など、残念ながら人間の口にするような代物ではなかった。 中には食べられそうなキノコも見受けられたが、生、それも唾液まみれでベタベタと糸を引くそれを食べる気にはなれなかった。 仕方がないので出された食事を断り、またもミカンを食べて腹を膨らませることにした。 「ゆぅ・・・それじゃあこのごはんは れいむたちがたべるね!! ゆっくりいただきます!!」 「「「いただきます!!」」」 もう運ぶの面倒なのかこの場で食事を始めるゆっくり達。だがその様子はどこかおかしい。 「むーしゃ、むーしゃ・・・ゆううぅぅぅぅ!! こんなのおいしくないよ!!」 「おかーさん、れいむもあまあまな みかんさんたべたいよ!!」 黙々と食事をしていた一家だが、ついには子ゆっくり達が次々と不満をもらしはじめる。 部屋中に満ちるミカンの甘くも爽やかな香り、それはゆっくりを誘惑するには充分な威力を発揮していた。 刺さるような視線に耐えかね、俺はミカンを分け与えようかと声を掛けた、しかし。 「おにいさん、ありがびゃあぁ!!?」 子ゆっくりに与えられたのはミカンではなく強烈な体当たりであった。 「「「いぎなりなにずるのおおおおお!!!??」」」 「うるさいよ!! おきゃくさまのものを ほしがるなんてゆっくりしてないよ!! いじきたないちびちゃんは はんせいしてね!!」 「「「ゆびゃああああああああぁぁぁぁぁぁ!!!」」」 ぼむぼむと体当たりを繰り返す女将れいむ。子ゆっくりの涙も謝罪の声も関係なしだ。 何もここまでしなくても良いと思うのだが、彼女には彼女なりのプロ意識が在るのかもしれない。 声を掛けるのもはばかれたので、俺は静かにミカンを頬張ることにした。 「ゆううううう・・・・・」 腹が膨れる頃、ぐったりした子ゆっくり達を尻目に女将れいむは何やら考えこんでいた。 「おしょくじも おきにめさなかったし、これじゃあれいむ おかみしっかくだよ!!」 どうやら俺のことを気にしているらしい。 別にこちらとしては構わないのだが、どうもこのれいむのプライドがそれを許さないらしい。 「そうだよ!! おにいさんにはとくべつ いあんさーびすをしちゃうよ!! ゆっくりまっていてね!!」 何か思いついたのか女将れいむはそう告げると、倒れている子ゆっくり達を蹴っ飛ばし連れ立って奥へ引っ込んでいった。 残された俺はやることもなく、手持ち無沙汰とばかりにミカンの皮を剥くのであった。 やがて指先が黄色くなる頃、またまたゆっくり達はやって来た。 「ごめんね、おにいさん。おめかししてたら おそくなっちゃったよ!!」 「「「かわいくってごめんねー!!!」」」 ゆっくり達はそれぞれ頭に花や落ち葉をつけていた。お洒落のつもりだろうか。 「これかられいむの せくしーなしょうが はじまるよ!! ゆっくりみていってね!!」 「「「ゆゆゆ~ん、ゆんゆゆ~~♪」」」 そうして子ゆっくり達は歌いはじめる。お世辞にも上手いと思えない歌は洞窟内でわんわんと響く。 四方八方から襲い掛かってくる雑音。そんな中、女将れいむは岩の上に飛び乗った。 「ゆっふ~ん、ちょっとだけよ~♪」 そうして甘い声を出しながら体をくねらせ始める。一体なんの真似だろう。 「こういうところはじめて? しこっても、い・い・の・よ☆」 顔をポッと染めながら、下腹部を突き出してくる。どうやらストリップのつもりらしい。 生憎と俺は饅頭に欲情する性癖は持ち会わせていない。とは言え、折角ここまでしてくれているのだ。 無下に断るのも何か気が引け、結局は見続ける羽目となってしまった。 「そんなにみつめられるとれいむ、はずかしいところからくろみつでちゃう~♪」 一見ノリノリな様に見えるが、よくよく考えると家族の前でこんなことを行うのは並大抵のことではない。 もしかしたらあの仮面の下では餡子が羞恥で煮え返っているのかもしれない。 ここまでされたらと、チップ代わりのミカンを手に取る。だがそこであることに気付いた。 これが人間ならパンツにでも挟むところだが、ゆっくりはそんなもの着けていない。 かといってステージに投げ込んで邪魔をするのも申し訳ない。 そう考えていると、れいむのアゴのあたりから何やら液体が垂れているのが目に留まった。 どうも穴が開いていて何かが漏れているらしい。ポケットのようなものだろうか? 何はともあれ御あつらえ向きである。俺は右手一杯にミカンを掴み、それを勢い良く手首まで突っ込んだ。 「ゆっっっばあああああああああああ!!!!!???」 「「「おかああああざああああああああん!!!??」」」 女将れいむは大きな声をあげ仰向けに倒れた。その体はビクビクと震えている。 引き抜いた右手は黒くベタベタと汚れていた。しかし、涙を流し泡まで吹いて喜ぶれいむを見るとやった甲斐のあるというものだ。 そうこうしていると、騒がしい洞窟内とは対照的に外が静かなことに気付いた。 出口から顔を出すと雨はすっかり上がっていた。俺は父まりさに声を掛けた。 「ゆ? もうかえるの? それじゃゆっくり おだいをだしてね!!」 貴重な体験ができたしそれなりに面白かったので、俺は籠ごと残りのミカンを与えることにした。 「まいどありがとう!! ゆっくりまたきてね!!」 そうして俺はゆっくりの宿を後にした。 「おかあさん、しっかりしてね?」 「げんきだしてね!! ゆっくりしてね!!」 「ゆぐううぅぅぅ・・・」 子ゆっくり達の輪の中心で女将ゆっくりはぐったりと伸びていた。その下腹部はボコボコと不自然に膨らんでいる。 「れいむ、おにいさんにミカンいっぱいもらったよ!! これをたべてゆっくりしようね!!」 そう言って父まりさは勢い良く籠の中身をぶちまけた。鮮やかな橙色が宙を舞う。 「ゆゆー!! ゆっくりいただきます!!」 「「「ゆっくりいただきま・・・す?」」」 地面に散らばった大量のミカン。しかしそれは全て皮だけであった。 「「「どおいうごどおおおおおお!!!??」」」 洞窟の中では、いつまでもゆっくり達の悲鳴が響き続けたのであった。 澄み渡った空は雲一つ無く、先程までの天気がまるで嘘のようであった。 黄色くなった男の頭上には、同じように星々が黄色い光を暖かく放っていた。 終わり 作者・ムクドリ( ゚ω゚ )の人 このSSに感想を付ける
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/2753.html
「おにいさん!れいむたちのおしごとのおてつだいをさせてね!」 「・・・・・・は?」 ある初夏の晴れた日のこと。 俺はいつも通り田吾作さんの畑のわりと近くにある自分の畑で仕事をしていた。 すると、人里のゆっくり対策の進んだ最近では珍しい山から下りてきたゆっくりの一家がやって来て、そんな事を言いやがった。 他所の地域では虫取りや他の害獣を追い払うのに役立てることもあるらしいが、ここではそんな習慣はない。 そもそも、人間の役に立とうという殊勝なゆっくり自体が極めてまれな存在だ。 「・・・農作業の手伝いって、お前らに何が出来るんだ?」 「れいむたちはむしさんやはっぱさんをむーしゃむーしゃできるよ!」 「野菜と雑草の区別はつくのか?」 「あたりまえなんだぜ!」 そう言って、ゆっくり一家の両親はゆへんと偉そうに胸(下あご?)を張った。 両親はれいむ種とまりさ種で子どもは親と同じ種族の赤ん坊サイズのものが2匹ずつ。 いわゆるオーソドックスファミリーだ。 「子どもが勝手に食ったりしないだろうな?」 「「「「しょんなことちなにゃいよ、ぴゅんぴゅん!」」」」 俺の言葉に反応した子ども達は反論の後、一斉に頬を膨らませた。 さて、どうしたものか・・・。 さっきの応答や言動・態度を見る限りにおいて、ゲスっぽい気配は無い。 それどころか家族揃ってゆっくりにしてはかなり聡明なようだ。 「ん~・・・」 「おにーさぁん・・・おねがいだよ!」 「・・・で、何が目当てなんだ?」 「ゆゆっ!・・・すごいぜ、れいむ!まりさたちのもくてきはばればれだぜ!」 「ほんとうだね!さすがにんげんさんだね!」 「「「「ゆっきゅちしゅごいよ!」」」」 珍しく殊勝な奴らだと思えばやっぱり見返り目当てだったが、それでも勝手に畑の野菜を食い漁るよりはずっと賢明だろう。 物珍しさにも後押しされ、俺は大根4本と交換で一家の申し出を受け入れることにしてみた。 野菜と雑草の区別が出来ていることを確認してから、柵の中に招き入れ、一家のためにそこそこの大きさの小屋と水飲み場を設置してやる。 こうして、俺とゆっくり一家の共同作業が始まった。 結論から言えばこの一家はいつも俺の予想をいい方向に裏切ってくれた。 ちゃんと雑草と野菜を区別して雑草だけを抜き取ってくれるし、虫の駆除もほぼ完璧。 流石にそれ以上のことは殆ど出来なかったが、虫害をどうにかしてくれるだけでも本当に助かる。 一度だけ子まりさが野菜に口をつけようとした事もあったが、その時には自分の子どもをちゃんと叱りつけていた。 なるほど、これだけ出来のよい個体であればゆっくりであってもそれなりに役に立つ。 それに・・・・・・ 「「ゆゆっ!おにーさん、ゆっくりしていってね!」」 「「「「ゆっくちちていってね!」」」」 「仕事があるからゆっくり出来ないっつーの」 「「じゃあゆっくりおしごとがんばってね!」」 「「「「ゆっくちがんばってね!」」」」 何より、間違ってもおうち宣言のようなこっちの神経を逆なでするようなことは言わなかった。 それどころか、仕事の合間の休憩時間の話し相手としても活躍してくれた。 柵では対処しきれない鳥類が作物を荒らそうとしたときには大声で俺を呼んだ。 とにかく、ゆっくり一家は十分すぎるほどに役に立ってくれた。 「れいむぅ・・・とってもゆっくりしてるね~」 「そうだね、まりさ」 「つぎのおにさんはれいむだよ!」 「「「ゆっくちにげるよ!」」」 また、柵と小屋に守られた畑で安全に食料を確保できるこの状況は一家にとって、とてもゆっくりできる環境だったらしい。 子ども達は赤ゆっくりから子ゆっくりへと成長し、餌を食べ終えた後に畑の周辺でよく鬼ごっこをしていた。 好奇心旺盛で俺に人間のことをあれこれ聞いてきたりもした。 「おにーしゃん!どうちでにんげんさんはむしさんをたべないの?」 「いや、食べられることは食べられるし、食べることもあるぞ」 「でも、おにーしゃんはたべないね!」 「虫はなぁ・・・人間には小さすぎるんだよ。あと、見た目がグロい」 「どうちて?おいちいのに?」 「人間の好みじゃないんだよ。さて、仕事に戻るからもう話しかけんなよ?」 「「「「ゆっくちりかいちたよ!」」」」 と、まあ、こんな具合に鬱陶しくも愛嬌のある奴らだった。 たまに引っ掴んで持ち上げてやるだけで「おしょらをとんでりゅみたーい!」と大喜びするので、散歩いらずな分犬よりも手間がかからない。 「おにーしゃん!いもうとたちにもおしょらちてあげてね!」 「「れーみゅもおしょらとびちゃいよ!」」 「「まりしゃもぶれいじんぐしゅたーちちゃいよ!」」 そうそう、そういえば相当ゆっくり出来たせいか、夏の間に家族が4匹ほど増えていたりする。 れいむ種とまりさ種が2匹ずつ。まだ生まれて間もない赤ん坊だが、にんっしんっで産まれたので結構大きい。 1回のにんっしんっで産まれたのは2匹で両種が1匹ずつ。 まずはれいむが産み、その次にまりさが産んだ。 そんなわけでいつの間にかこの一家は両親2匹に子ども8匹と言うかなりの大家族になっていた。 勿論、新しく出来た家族も親や俺の言うことをきちんと守って、虫や雑草を駆除してくれた。 おかげさまで、今年はいつもよりもずっと収穫が多かった。 そして収穫を終えた日の夜。 翌朝には一家に約束の大根を渡し、野に返してやらねばならない。 俺は前々から読者にも伏線すら提示せずに考えていたある計画を実行に移した。 そろーりそろーりと連中の小屋に忍び込むと、夏に生まれた子どもを各種族1匹ずつ捕まえ、いったん自分の部屋へ戻った。 それから、今までは常時開放されていた小屋の出入り口に扉を取り付け、しっかりと施錠も出来るようにした。 仕上げに、残った家族をこいつらの本能に刻み込まれた言葉で叩き起こした。 「ゆっくりしていってね!」 「「ゆゆっ!ゆっくりしていってね!」」 「「「「「「「ゆっくりしていってね!」」」」」」」 いとも容易く目を覚ました一家はしばらくのん気に「おにーさん、どうしたの?」などと言っていた。 が、やがて家族が減っていることに気づくと顔を真っ青にして右往左往し始めた。 「おにーさん!れいむのおちびちゃんがいないよおおおおお!?」 「そりゃそうだ。俺が預かったんだからな」 「どうしてそんなことするんだぜ!?」 「それはね!お前達との取引を無効にしたいからだよ!」 「「「「「「「「ゆゆっ!?」」」」」」」」 俺の突然の宣言に「びっくりー!」とでも言わんばかりに目を見開いて驚くゆっくり一家。 今までそれなりに仲良くしてきただけに、その信頼の全てを根底から覆す言葉が信じられないのだろう。 その証拠に、しばらく唖然していたれいむは我にかえるや否や、頬を膨らませてこう言った。 「おにーさん、じょうだんはやめてね!ゆっくりできないよ、ぷんぷん!」 初めて俺に出会った日から数えると、なんと100日以上もの付き合いがあるのだ。 流石に俺がそんなことをするとは思えない、或いは思いたくないらしい。 しかし、残念ながら全て事実であり、目をそらしても変わることの無い真実。 そのことをれいむ達に理解してもらうために、俺は近くにいた、親に連れられてここに来た1匹の子まりさを踏み潰してやった。 「「「「「・・・・・・ゆゆっ!?」」」」」 「これで分かっただろ?俺は本気だよ」 「ゆああああああああああああああああああああ!?」 「でいぶのおぢびぢゃんがあああああああああああああ!?」 「「「「「ばりぢゃあああああああああああああ!?」」」」」 家族が1匹踏み潰されたことでようやく事態の深刻さを認識した一家は恐怖と絶望に顔を歪め、彼女らの双眸からは涙が溢れ出している。 が、泣き止むまで待つのも億劫なので「ゆっくりしていってね!」を利用して半ば強引に泣き止ませると、即座に用件を伝えた。 「さっき言ったとおり大根はやらん。嫌なら全員殺す・・・理解したか?」 「「ゆぐっ・・・・・・ゆっくりりかいしたよ!」」 「「「ゆえーん!」」」 「おにーしゃんひどいよ!やくそくをやぶりゅなんてゆっくちしてないよ!」 「しょーだよ!ゆっくちできないよ!」 残り7匹のうち、5匹は自分の立場をしっかりと弁えてくれたようだが、2匹だけそうでないものがいた。 1匹は両親に連れられてきた子まりさで、もう一匹は夏に生まれた子まりさだった。 彼女らは「ゆっくりさせてね!」などとのたまいながら、成体一歩手前の体を思いっきり跳躍させて俺に体当たりを仕掛けてくる。 が、悲しいほどに痛くもかゆくもないのでしばらく黙ってその攻撃を喰らってやる。 最初はいい気になって「ゆっくりこうさんしてね!」などと言っていたが、やがて息が上がり、冷静になった頃には己の無力を理解した。 「「どほぢでじぇんじぇんぎがにゃいのおおおおおお!?」」 泣き叫ぶ2匹の呼吸は荒く、また体当たりを繰り返したせいでところどころ青あざが出来ていた。 ぼろぼろになりながら、己の無力をかみ締める姿は可哀想でどこか哀れみを誘うものがあるが、容赦することなくお仕置きを加えてやった。 「うりゃ!」 「―――――――――――――ッ!!?」 サミング、いわゆる目潰しを食らわして子まりさの目玉を両方とも抉り出すと、悲鳴にもならない金切り声が子多重に響き渡った。 両親はガタガタと震えながらも「やめてあげてね!いたがってるよ!」と俺に許しを請う。 その傍では素直に言う事を聞いた殊勝な子ども達が両親にへばりついて泣きながら、歯をガチガチと鳴らして震えている。 そして、当の子まりさは目のあった場所から餡子を漏らしながら床を転げまわっていた。 「ゆっくりにげりゅよ!そろーりそろーり・・・」 「ハイ残念、もう見つかった!」 「ゆゆっ!?やめてね!こっちこないでね!?」 子まりさの惨状を目の当たりにした子れいむもまた涙で頬をぬらしながら、必死に逃げ回っていた。 しかし、普段は開けっ放しの出入り口は閉まっており、この小屋には隠れられるような場所も無く、逃げ場所なんて何処にもなかった。 それでも子れいむは俺から逃げ続けた。俺がわざと泳がせていることにも気づかずに一心不乱に逃げ続けた。 そして、疲労が限界に達し、一歩も動くことが出来なくなった瞬間に彼女は俺によって光を奪われた。 俺は一家に食料の代わりに安全に越冬できる巣、以前から使用していたあの小屋を貸してやることにした。 ただし、扉はしっかりと施錠されているし、他の場所から外に出ることもできない。 勿論、食料をやるつもりは微塵も無いので、このままでは何も食べることは出来ず、飢え死にするのを待つだけである。 「そこで、赤ゆっくりのできる蔦やそれに成っている赤ゆっくりと大根を交換してやろうと思う。嫌なら飢えて死ね!」 「ゆゆっ!・・・お、おにーさんはあがぢゃんをあづめでどうずるの・・・?」 「いい質問だ。俺の家に連れて行ったお前らの子どもに食べさせる。ちなみにそれ以外の餌は与えない」 「「「そ、そんなひどいことちないでよ!?ゆっくちできないよ!」」」 自分たちの立場を理解しているとは言え、流石にこの提案ばかりは呑めないらしい。 必死の形相で抗議し、何とか俺から妥協を得ようと一生懸命媚びへつらったり、泣き落とそうとしたりしている。 が、やっぱり何の意味も無い。 「お仕置きされたいか?」 「「ゆゆっ!おしおきはやだよ!ゆっくりできないよ!?」」 「「「おしおきごわいよぉ~!」」」 「「ゆぎぃ!?お、おぢごぎいやあああああああああああああああああ!?」」 どんなに頑張ってもたった一言ですべてが消し飛んでしまう。 両親は子をかばい、子は両親にすがりつき、既にお仕置きを受けたものは気が狂ったかのように喚いていた。 そんなどうしようもなく無力な一家に向かって更に話を続ける。 「ちなみに家のほうの子どもの食事は君たちと交換した蔦や赤ちゃんだけだからね。ゆっくり理解しろよ?」 「「ゆぐっ・・・ゆ、ゆっくりりかいしたよ・・・」」 それから交換レートについても話し合い、蔦1本=大根の葉っぱ10g,赤ゆ1匹=大根の葉っぱ3gという相場に決定した。 ちなみに、うちで取れる大根1本の重さが1000gの可食部分が900g程度であるから蔦1本に赤ゆが5匹なると仮定して1本=25gである。 つまり、40本の蔦を手渡してようやく1kgの食料を得られるのだ。 一家はその分量を示されたときに少なすぎるとゴネたが、手近な成体間近の子れいむにお仕置きをしてやったら快く同意してくれた。 植物型であっても自分が生きたまま子どもを産めるだけの大きさに達しているのは両親と最初からいた4匹の計6匹。 ただし、子どものほうは蔦を3本も生やせば命に関わるだろうし、連続出産なんてとてもじゃないが出来ない。 勿論、いくら十分成熟している両親と言えど5本以上蔦を生やすと流石に危ないのは言うまでもない。 現在生き残っているゆっくりは7匹。 両親のれいむとまりさ、成体間近の子れいむが2匹と子まりさが1匹。 子ども達に関しては1匹のれいむを除いて全員お仕置きによって目を失ってしまっている。 そして、夏に生まれた子れいむと子まりさが1匹ずつ。 こちらは子まりさの方だけがお仕置きによって目を失ってしまっていた。 「ゆっぐ・・・ほどぢでごんなごどになっだのぉ・・・」 「ゆっぐぢでぎないよぉ~・・・」 「「ゆっぐちちだいよ~・・・」」 「くらいよ~・・・ゆっくちでいないよぉ・・・」 そんな絶望的な境遇の中で苦しみにあえぐ一家を眺めながら俺は小屋の出入り口へと向かっていく。 そして、たった一つだけ希望を与えて小屋を後にした。 「俺の部屋の子ども達は来年の農作業用だから餌以外は最高の環境でゆっくりしているぞ」 れいむとまりさは本当に賢い個体だった。 男の言葉を聞いて、意味するところを、男の意図をきわめて正確に把握していた。 また、ゆっくり特有の希望的観測をせずに自分たちの末路を理解した。 「れいむ・・・ごべんね。まりさがにんげんさんのおでつだいしようなんていったせいで・・・」 「ちがうよ、まりさ!れいむもさんせいしたんだよ!」 「「「ゆっくりできないよぉ~」」」 「もうやだ、おうちかえる!」 「おちびちゃんたち、ゆっくりがまんしてね!はるになったらおうちにかえれるよ!」 勿論、嘘だ。男は「部屋の子ども達は来年の農作業用」だと言っていた。 つまり、来年には子ども達がこの小屋で寝泊りをして虫や雑草の駆除に従事することになる。 その時、自分たちが生きていると余計なことを吹き込んでしまう恐れがある。 「きょうはゆっくりやすもうね!」 「あしたになったらきっとおにーさんもゆっくりできるようになってるよ!」 「「「「「ゆっくりりかいしたよ・・・」」」」」 しかし、その事実を伝えるのはあまりに酷だと判断した両親は何も言わず、ゆっくりすることを提案した。 両親の言うことを聞いて痛みや恐怖を堪えながら、そしてそれらから逃げるように子ども達は眠りについた。 彼女達はそれがこの世界で最後のゆっくりになることを知るはずがなかった。 「そろーりそろーり・・・れいむ、ゆっせーので、でいくよ?」 「ゆっくりりかいしたよ。ゆっせのーで」 あっという間に眠りについた子ども達を起こさないように静かに傍まで這いずって行った両親は掛け声と同時に子れいむに噛み付いた。 その子れいむは夏に生まれたばかりの子どもで、まだ小さく成体2匹にいきなり噛みつかれてはひとたまりも無い。 一瞬にして大量の餡子を失った子れいむは断末魔を残して終らないゆっくりへと旅立って行った。 「・・・もっと、ゆっくちちたかったよ・・・」 「「む~しゃむ~しゃ・・・ごべんねぇ・・・」」 そうして子れいむの亡骸を食べ終えた両親は次に両目を失った子まりさを食い殺した。 言うまでも無いことだが、出来ればこんなことはしたくないのだろう。 悲しみの色に染まった双眸からは涙が溢れ出し、水に弱い頬をふやけさせてしまっている。 夏に生まれた子まりさも同じように殺すと、その亡骸を両目を失った成体間近の子まりさ2匹の口にねじ込んだ。 舌を使って器用に口の奥へと運び、何とかこぼれ落ちないようにする。 その後、両親は我が子に頬をこすりつけていわゆるゆっくりにとっての交尾“すっきりー”をした。 途中で子どもが目を覚まし、「ゆっくりできないよー!」と泣いていたが、それでも無理矢理最後までやり遂げた。 「ごべんねぇ・・・」 「「も、もっと、ゆっくちしたかったよぉ・・・」」 「おぢびぢゃんだち・・・ごべんねぇ」 翌朝、唯一生き残った成体間近の子れいむが目を覚ましたとき、部屋には3本の蔦を頭に生やした両親しかいなかった。 それ以外のものは見慣れた壁と床と、わずかばかりの黒いかたまり、そして、10本の蔦を生やしている黒ずんだ大きな塊だけ。 朝早くにやってきた男は、以前のようにゆっくりしていることは無く、その蔦を全部引っこ抜くと足早に小屋を後にした。 「ねぇ、おかーさん・・・いもうとたちは?」 「れいむ、ゆっくりきいてね!」 「ゆっ・・・ゆっくりきくよ!」 神妙な面持ちの親れいむのただならぬ気配を察知した子れいむも真剣な表情になる。 「れいむのいもうとたちはね・・・・・・おかーさんたちがころしたんだよ!」 「ゆゆっ!?う、うそいわないでね!おこるよ、ぷんぷん!」 「ほんとうなんだぜ。いっぱいいてもごはんがへるだけだからころしたんだぜ!」 「ど、どほぢでぞんなごどずるのおおおおおおおおおお!?」 その残酷な言葉を聞かされた子れいむは泣きじゃくり、ぴょんぴょんと飛び跳ねながら両親に怒りをぶつける。 が、両親は「しかたなかったんだぜ!」とか「れいむのためだよ!」などと言うばかりで、何一つ納得のいく言葉を口にしてくれない。 やがて我慢の限界に達した子れいむは親れいむに飛び掛るがあっさりと弾き飛ばされ、まりさに取り押さえられてしまった。 「おがーざんのばがああああああああ!?」 「しかたないんだよ!こうしないとゆっくりできなくなっちゃうんだよ!」 「ぞんなのぢらないよ゛!ゆっぐぢでぎないおがあざんなんでゆっぐぢぢね!!」 厳しい自然の中で仲間を失った経験の無いこの子れいむにとって、生存のためでも仲間を切り捨てるなんてことは考えられない。 だから、親の気持ちも知らずに泣きつかれて眠るまでただひたすら呪詛を吐き続けた。 「ゆっくりしね・・・だって」 「おお、こわいこわい」 本来ならふてぶてしい表情で言うはずのこの言葉を、今ばかりは悲しみに満ちた表情で口走る。 ここにいてもいつか殺されるだけなら、いつか脱走を試みなければならない。 そして、そのためにはまず生き延びなくてはならないし、脱走の際に足手まといにしかならないものを生かしても仕方が無い。 そんな個体はよしんば逃げ延びても冬の野原や森で生き残ることなどまず不可能なのだから。 ならばさっさと間引いて一番逃げ延びる可能性のあるれいむだけでも救いたい。 また、きちんと蔦を提供することで、男の部屋の子ども達も何とか生き延びることができるかもしれない。 それが子どもが決して知ることの無い両親の想いだった。 頬を涙でぬらしながらも安らかな表情で眠る我が子の傍で2匹は再び6度に渡ってすっきりを繰り返した。 それが終わるとタイミング良く男がやって来て、さっきの分の餌(大根の葉っぱ650g)を床に置き、再び蔦を引き抜いていった。 結論から言えば両親は、餌には一切手をつけずに命を削って20本近い蔦を提供したが、子どもを逃がす機会を手にすることは出来なかった。 子れいむは両親の本心を理解しせず、度重なるすっきりで疲弊しているところを彼女に襲われたのが両親の死因となった。 小屋に残されたのは世間知らずで、両親ほど賢くもなかった1匹の成体間近の子れいむとおよそ1000g分の大根。 3ヶ月ばかり続く長い冬の間、最初の数日は両親の教えに反発するように適量以上を食べ続け、その後数日は妙な臭いを発する両親の死体で飢えをしのいだ。 が、やがてそれも尽き、2,3週間かけて子れいむはゆっくりゆっくりと飢えて、やせ衰えて、死んでいった。 「もっと・・・ゆっくり、したかったよ・・・」 おわり 善良なゆっくりは心理的な抵抗とは別の次元でも虐待しにくい気がする。 ちなみに、男の部屋の子ゆっくりは男が餌を管理してくれたおかげで無事生き延びました。 で、畑仕事を手伝いながら、10匹の子ゆっくりを授かり、冬には(以下略 このSSに感想を付ける
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/1563.html
「むーちゃ、むーちゃ、ちゃーわせー」 赤ちゃんのゆっくりれいむはここで一人で暮らしている。 両親は随分前に実験で死亡した。親のゆっくりまりさの方は実験による破損が少なかったため最期に赤ちゃんに会うことができた。 とは言え、餡子の中に大量に異物を埋め込まれているため思考能力は低下し、 赤ちゃんに逃げろともなんとも伝えずに死んだけど、 「おねーしゃん、ゆっくりちていってね」 「そうさせてもらいますよー」 永琳様の言いつけで、赤ん坊の世話なんかしているが、 こんな奴が一体何になるんだろう。何も指示は受けていないし・・・。 適当といわれてるからテキトーでいいのかな。 香霖堂で買った外の世界のマッサージチェアにてゐは腰掛ける。 まさか、永琳様や鈴仙の古着があんな高値で買い取られるとは。 ただ、一番高値で売れたのが姫様の上等な着物じゃなく、寝巻きにしていたジャージだったのがあの店らしい。 「おねーしゃん、あそぼ」 「無理だねー、できないねー、お断りだねー」 「・・・じゃあ、れいみゅがおうたうたってあげる」 「迷惑だねー、独善的だねー、うるさいねー」 赤ちゃんのゆっくりれいむは困っていた。 遊びたい盛りなのに、誰も相手をしてくれる人がいないのだ。 いつも部屋にやってくるお姉さんは椅子に座ってゴロゴロしたり本を読んだりしてるだけだ。 何も楽しくない。ああ、思いっきり遊びたいな。ゆっくりれいむはいつもそう思っていた。 「おねーしゃん、おもちゃちょうらい」 「拒否だねー、嫌だねー、自分で作ってねー」 「・・・ボールちょうらい」 「断固拒否だねー、絶対嫌だねー、がんばって自分で作ってねー」 「・・・」 ゆっくりれいむが黙り込んだのに満足し、てゐは文々。新聞のマンガ欄を読み始めた。 ゆっくりれいむはつまらなかった。 誰も遊んでくれないから一人でゆっくりしていた。 食事も水もある。意外に美味しい。 つまらないながらも満ち足りた生活を送っていた。 しばらくして、赤ちゃんのゆっくりれいむはすっかり大人になった。 「はーい、残念ながらお前が死なずにゆっくりしてたから、イライラしてるお姉さんから仕方なく御褒美だよ」 てゐは本当にイライラしていた。 永琳はこのままこいつを群に戻すそうだ。 それも一番待遇の良い部屋にだ。このまま一人で死ぬんだと思っていたてゐは裏切られた気分だった。 「ゆっくりし」 「しねーよ!!」 「ゆ!!」 「他の仲間がいるところに連れて行くから、さっさとこのかごに入れよ!!」 「あそべる?」 「バカ知るかバカ、入れクズのろま、ゆっくりバカ、バカゆっくり。死なせるぞ、何百回も死なせるぞ」 てゐはキャラクターが崩れるほどイライラしていた。 ゆっくりれいむはそそくさとかごに乗り込む 「はーい、イライラ発、超イライラ行き特急がストレスマッハで発車です」 かごを持ち上げ部屋を出るてゐ。 「わー、おそらを」 「飛んでねぇよ!」 「わー、おそらを」 「絶対飛んでねぇよ!!」 「・・・」 ゆっくりれいむは目に涙をためて黙り込んだ。 「絶対に飛んでねぇからな!!」 その後、ゆっくりれいむが何か言うたびにてゐは聞こえるように舌打ちをした。 ゆっくりれいむは群に戻される。 はじめてみる子にみんな興味心身だ。 「ゆっくりしていってね」 「ゆっくりしていくね」 すぐに友達になる。 「永琳様、何の実験か、教えてプリーズ。さもないとあの群に飛び込んで餡子のプールを練成してくるよ」 「それは後日お願いするわ。見ていなさい。あのゆっくりれいむはもうダメよ」 永琳の言葉通りになる。 ゆっくりれいむは最初、みんなと遊びたがった。 しかし、自分と同じぐらいのゆっくりは子育てやら何やらで忙しい。 「ゆ?あそぶの?いそがしいからあとでね」 「あそぶ?れいむ、こそだては?」 「れいむ、まだあそびたいの?ゆっくりしてないでおとなになってね」 「れいむはまだこどもだね!!」 下の世代と遊ぼうとしても相手にされない。 ゆっくりれいむは群の中で孤立していった。 「じゃあ、てゐ、お願いするわ」 両手に斧を装備したてゐが部屋に入ってくる。 「私は遊びの神、皆の者遊んでいるか」 「ゆっくりしていってね」 「断る。遊べ」 「ゆ?あそぶひまなんてないよ、ばかなの?」 「馬鹿はお前だ。遊びの神の前で何たる暴言」 自称遊びの神はゆっくりまりさを斧でかち割った。 「おかーしゃん!!」 さきほど殺されたゆっくりまりさの子どもが死体に駆け寄る。 「なんだお前、死を悲しむ前にやる事があるだろ」 「ゆ?」 「ゆ?じゃねぇよ。遊べよ!!」 また一匹、自称遊びの神はゆっくりを殺した。 「あ、あそぶよ。あそべばいいんだね?」 群のリーダーのゆっくりまりさが言う。 「イエス、遊べ。まずは追いかけっこだ。」 みんな走り回った。追いかけているのが誰とも知らず。 遊びの神は何もせずただ見守っていた。 一時間も走り回っていると、体力のないゆっくりパチュリーなどは疲れて動けなくなってくる。 「どうした、遊べ」 「む、むきゅ・・・むり、ゆっくり・・・させてね」 「プレイorダイ!!」 ゆっくりパチュリーは斧で真っ二つにされた。 パートナーのゆっくりまりさが駆け寄る。 「パチュリー・・・なんでゆっくりさせてくれなかったの」 「遊べよ」 「いやだ。ゆっくりしたい!!」 「じゃあ、お前は死体」 ゆっくりまりさは殺され、群の中では脱落するものも増えてきた。 脱落すれば死ぬ。追いかけっこはまだまだ続いた。 「はーい、追いかけっこやめー」 急に自称遊びの神からのストップ宣言 「自己紹介してなかった。ここに最近来たゆっくりれいむいる?」 「ゆ?あのこだよ」 ゆっくり達は一斉に部屋の隅にいるゆっくりれいむの方を向く。 「あの子、遊びたがってただろ?」 「うん、おとななのにね」 うるせぇ!!と答えたゆっくりまりさに斧を投げつける。 「大人とかどうでもいいんだよ。遊びに子どもも大人も生きるも死ぬもねぇんだよ」 ゆっくり達は怖がって相槌も打てない。 「えー、そのゆっくりれいむが遊びたいと強く願ったから天界の方から来ました遊びの神です」 一斉に遊びたがっていたゆっくりれいむを睨む。 「何睨んでるんだよ!!遊ばない奴の方が悪なんだよ!!」 遊びの神は投げた斧を拾うついでに何匹もゆっくりを潰す。 「じゃあ、追いかけっこを再開します」 しばらくして、部屋にはゆっくりれいむ一匹だけが残った。 遊びたいといっていた子だ。自分の我が侭が引き起こした惨状に半分気が狂っている。 「みんな、あそぼうよ!!」 ピョンピョン跳ねて、もう死んでいる仲間を遊びに誘う。しかし返答はない。 仕方なく、遊びの神の所に行く。 「おねーさん、あそぼ」 「無理だねー、できないねー、お断りだねー」 そう言って遊びの神は部屋を出て行く。 「・・・ゆゆ?みんなどうしたの?あそぼ?」 ゆっくりれいむはその後、ずーっと一人で追いかけっこをしていた。 ~あとがき~ 次回はもう少しはっちゃけたてゐの活躍が見てみたいです てゐとかチルノにはえーりん実験室一部屋ぐらいぶっ壊して欲しいです by118
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/2041.html
3000年前…力を持った一匹のゆっくりが自らを魔王と名乗り人々を苦しめた。 だがやがて勇者が現れ魔王は封印される。魔王は封印される間際に言った。 世が乱れ憎しみで満ちたとき我は再び蘇る、と。そして現在、ついに魔王が復活したのだった! 第一章 プロローグ 魔王はまりさ種であるが全長10mをゆうに超え、頭には2本の角、鋼のような黒く硬い皮膚を持っていた。 その赤い瞳からは知性を感じさせるが同時に残忍さを感じさせる。側には四匹の側近が付き添っていた。 魔王により各地のゆっくり達は魔王の根城、風雲ゆっくり城へと集められていく。 「ゆっ!魔王さまがゆっくりできない人間達をこらしめてくれるね」 「これでみんなゆっくりできるようになるよ!」 ゆっくり達は魔王が人間達を倒したつもりになって喜んでいる。 「でもなんで魔王様はみんなを集めたのかな?」 「きっとゆっくりできるいい話だよ」 やがて世界中のゆっくり達が魔王の住む風雲まりさ城に集まった。魔王がゆっくりと口を開く。 魔王「皆に集まってもらったのは他でもない…朕はゆっくり達が平和で幸せにゆっくりできる世界を創ろうと思う」 ゆっくり達から歓声が上がる。やはり魔王さまはゆっくり達のために戦ってくれるのだ! 魔王「だが問題なのは勇者の存在…奴は必ず我の前に立ちふさがるであろう。お前達は我に協力してもらいたいのだ」 ゆっくりたちの歓声はさらに強くなる 「みんな魔王様と一緒に戦うよー」 「みんなでゆっくりできる世界をつくろうねー」 だが魔王はゆっくりと首を振る 魔王「いやその必要は無い」 魔王はゆっくりと息を吸い込むとゆっくりたちに向けて吐き出す。魔王の息は炎となりその場のゆっくり達を焼き饅頭に変える。 突然の事態にパニックになりながらも逃げ惑うゆっくりたち。 「い゛ぎゃ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛づい゛い゛い゛い゛!!」 「な゛ん゛でな゛の゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛!」 「も゛っ゛どゆ゛っ゛ぐり゛じだがっ゛だよ゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛!」 逃げ惑うゆっくり達をみながら魔王は口を開く。 「前回勇者に倒されてから朕は考えていたのだよ…なぜ朕が人間ごときに負けたのか」 それに続き側近達が口を開く。 「それはお前達雑魚ゆっくり達が勇者に倒されることにより経験値を与え勇者を強くしたからだ」 「ゆっくりを倒すことでしかLVUPできない勇者は雑魚ゆっくりが滅びれば強くなれない」 「お前達雑魚ゆっくり達は我ら上級ゆっくりのために滅びてもらう」 「ちからなきゆっくりたちよ…ゆっくりちね!」 それを聞いたゆっくりたちは逃亡にかかる。 「魔王さまの考えはゆっくりできないよ」 「ゆっくり逃げようね!」 だが入ってきた扉が閉まりゆっくりたちはみな閉じ込められた。 ゆっくり達の中には無謀にも魔王に歯向かおうとする者もいた。 だが魔王の鋼鉄の毛が針のように体に突き刺さり身動きが取れなくなる。 「あ゛、あ゛が…あ゛があ゛あ゛」 針が刺さっても餡子が漏れる事はないのでなかなか死ぬことができない。 激痛のためもがこうとするが針が食い込みより痛みが強くkなる。 「光栄に思うがいい、魔王さまの手にかかり魔王さまの経験値となることができることを!」 「喜ぶがいい、魔王さまに食べられ魔王さまの血肉となることができることを!」 その日風雲ゆっくり城はゆっくり達の悲しみと苦痛の叫びで満たされた。 第二章 悪霊のごときお兄さん 勇者の血を引く人間”き゛やく”が主人公。魔王の追撃から唯一逃げることができたゆっくりれいむは 魔王に復讐すべく勇者に倒され経験値となる。だが勇者もゆっくり1匹程度の経験値ではレベルアップできない。 勇者の相方で僧侶の”まいこ”はリザレクションの魔法で何度もゆっくりれいむを蘇らせ勇者に倒させる。 そのうちゆっくりれいむの経験値に満足できなくなった勇者はゆっくりれいむをその辺に住む醜悪なモンスターと合体させる。 醜くなった代わりに強化されたれいむのおかげで楽々LVUPする勇者。ついに前勇者が魔王を倒したLVに到達する。 れいむ「こ、これだけ強くなれば十分だよね?もうれいむを殺さないでね」 き゛やく「いや俺LV上げるの楽しくなってきたわ。このままLV99目指すぜ(ザク)」 れいむ「い゛ぎゃ゛あ゛あ゛あ゛い゛だい゛い゛い゛い゛い゛!れ゛い゛ぶま゛だじぬ゛う゛う゛う゛う゛!」 まいこ「死んでもすぐ生き返らせるから大丈夫ですよ。リザレクション!!」 やがてLV99になる勇者 れいむ「こ、今度こそもう終わりだよね…もうれべるあっぷしないもんね」 き゛やく「それがさっき調べたらLV99になると転生してよりパワーアップすることができるらしい。 LVが1に戻る上LVUPに必要な経験値が3倍になるけど強くなるためにはやるっきゃないよね(ザク)」 れいむ「ぐげえ゛え゛え゛え゛え゛!も゛う゛でい゛ぶを゛え゛い゛え゛ん゛の゛ね゛む゛り゛に゛づがぜでえ゛え゛え゛え゛え゛!」 まいこ「じゃあ生き返らせますね。リザレクション!!」 ※ゆっくりと別の生き物との合体がゆっくり転生と設定が被るので没になりました。 第三章 そして伝説へ チルーザム「さあ来いき゛やく!オレは255回斬らないと倒せないぞオオ!」 き゛やく「チクショオオオオ!くらえチルーザム!」 勇者は携帯用火炎放射器をチルーザムに向けると炎を吹き付けた。 チルーザム「ギアアアア!」 物理攻撃には強いチルーザムだが炎には弱いらしく一瞬で消し炭になる。 レミール「チルーザムがやられたようだな…」 デスレイム「ククク…奴は四天王の中でも最弱…」 メフィスリン「人間ごときに負けるとは上級ゆっくりの面汚しよ…」 チルーザムが倒れても四天王は3匹残っていた。 音速で移動・ワープができるレミール、即死魔法を使うデスレイム、そして全てが謎の存在メフィスリン。 いずれもチルーザムなど比較にならないほどの強敵である。 き゛やく「ウオオオオオオ!この炎をくらえエエエエ!」 3匹「グアアアアアアア!」 部屋に入ってきた勇者は3匹に火炎放射器の炎を向ける。3匹も一瞬で消し炭になった。 き゛やく「やった…ついに四天王を倒したぞ…これで魔王のいる風雲まりさ城への扉が開かれる!!」 魔王「よく来たな勇者き゛やく…待っていたぞ…」 き゛やく「こ…ここが風雲まりさ城だったのか…!感じる…魔王の魔力を…」 魔王「き゛やくよ…戦う前に一つ言っておくことがある。 朕の魔王スパークは一撃でトウキョウ租界を消滅させるほどの威力を持つが、撃つまでに溜め時間が10時間必要だ」 き゛やく「な 何だって!?」 魔王「そしてちょうどこれから溜め始めるところだ。どう考えても間に合わないなクックック…」 大魔法が間に合わないなら詠唱時間の短い魔法で戦えばいいんじゃね?と思うだろうが、 勉強嫌いな魔王は魔王スパーク以外の魔法を勉強していなかった。 いわゆる”ギガデインが使えれば他の魔法使えなくてもいいんじゃね?”理論である。 き゛やく「フ…上等だ…オレも一つ言っておくことがある。ここに到達するまでに 強敵(ライバル)との戦いや伝説の装備集め、可愛い相方とのラブラブイベントなどがあると期待していたが ホームセンターで火炎放射器を買ったのと四天王討伐以外のイベントは何一つ無かったぜ!」 魔王「そうか」 第二章が没になったので勇者のLVは1。相方の存在自体もなかったことになっている。 魔王はゆっくりと魔王スパークの溜め状態に入り完全に無防備な状態となった。勇者はすかさず魔王にとびかかる。 勇者 「ウオオオいくぞオオオ!」 き゛やくの勇気が世界を救うと信じて…!ご愛読ありがとうございました! 過去の作品 ゆっくり転生(fuku3037.txt~fuku3039.txt)
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/4520.html
小腹の空いた俺は昼食を取ろうとファストフード店に立寄り Mサイズのコーラとハンバーガーを注文、 2Fへの階段を上って窓際の列の端に座った。 窓から見下ろせるものは交差点、横断する人、向かいの果物屋、その左隣の眼鏡屋。 ガラス窓の外の声は聞こえない。 聞こえるのは2つ離れた席でお喋りをする、奥樣方2名の楽しそうな会話だけだ。 俺はただただボーッっとハンバーガーの包みをカサカサと開きながら、窓の外に目をやった。 交差点の向こう、果物屋の左隣、眼鏡屋の前の歩道に居るものへ目をやった。 (ゆっくりしていってね!) ガラス窓の向こうで恐らくその様な事を言っているのであろう。 眼鏡屋の前に居るあの丸っこいのは"ゆっくり"という生き物。 黒い髪に紅いリボンを巻き、まん丸な輪郭を持つ、 まるで人間の顔をデフォルメしたかの様な生き物。 所謂"れいむ"だ。黒髪のゆっくりは大抵そう呼ばれる。 大きさはバスケットボールくらいだろう。 何処から来たのか知らないが、何処でもいい。どうせその内誰かが処分する。 期待外れなゆっくり達 作者:古緑 (ゆっくりしていってね!) ガラス窓の外の、ふてぶてしい笑顔を浮かべたゆっくりはきっとそう言いながら 果物屋に向かうのであろうエプロン姿の太ったオバさんに近づいて行った。 眼鏡屋の前の歩道は狭い。 だからオバさんは寄って来るゆっくりを避ける為に少し車道に出て、 迂回する様にしてゆっくりを振り切っていった。 (…ゆっくり?ゆっくりしていってね!) その背中に向かって不思議そうに叫ぶゆっくり。オバさんは振り返らない。 少なくともこの辺でのゆっくりに対する対応なんてあんなモノだ。 例え俺があのオバさんでも同じルートを取ってゆっくりを避ける。 どんなに暇だったとしてもゆっくりと一緒にゆっくりなんてしない。 (ゆっくりしていってね! れいむと一緒にゆっくりしていってね!) オバさんに無視された事で生来の自信に満ちた表情にも陰りが見える。 それでも健気に周りの人間に呼びかけるゆっくり。 次にゆっくりが向かっていったのはだらしない格好をした中年男性。 無論彼も通り過ぎて行くだけ。パチンコにでも行くんだろう。 (…ゆっくり…… …ゆっ!ゆっくりしていってね!) 寂しそうに男性を見送った後、また次の通行人に話しかけるゆっくり。 次は杖をつくお爺さんだったが 彼は避ける事もせずに真正面からゆっくりとゆっくりを突破して行った。 本気で気付いていなかったのかもしれない。 その背中を見送るゆっくりの、斜め45°に引かれていた眉はハの時に変わっていた。 ゆっくり。 彼等は俺がまだ子供だった頃、20年以上前だ。 彼等は突然どこからか現れ、世の話題を攫った。 或る人は宇宙人と、或る人は妖精と、悪魔と呼んだ者さえ居た。 なんせあの様にワケの分からない生き物だ。 餡子の詰まった饅頭なのに何故か動けて、人の言葉(日本語)を解し、更に喜怒哀楽の感情を持つ。 話題にならないわけが無い。 あの頃はテレビ、新聞、雑誌、様々なメディアを通して彼等の姿を見る事が出来た。 だがそれも現れてから数年間の間だけ。 俺が成人を迎える頃、世間はとっくにゆっくりに対する興味を失っていた。 研究員だの科学者だの、その辺の人にとっては興味の尽きない存在に違い無いだろう。 しかし俺みたいな好奇心の薄い人間にとって ゆっくりは次第に『ただ言葉を解し、中身が餡子の生き物』それだけの存在になっていった。 あれだけ不思議生物と騒がれていたのに何の事は無い。 超能力を使えるわけでもない。その体に何か重大な秘密を秘めているわけでもない。 ただ跳ねて叫ぶだけ。ゆっくりしていってね、と。 馬鹿にしてるとしか思えない。 テレビなんかはゆっくりの番組をしつこく流し続けていたが いい加減飽きられて姿を消すのに大して時間は掛からなかった。 横でお喋りしてる奥様方も、ゆっくりに対する興味なんてもう持ってないと思う。 ガラス窓の下の不思議生物よりも旦那のムカつくところを話してるんだから。 (ゆっくりしていってね!ゆっくりしていってね! ゆっくりしていってね!れいむと一緒にゆっくりしていってね!) 窓の下ではゆっくりが叫ぶ様に人々に呼びかけている。 俺のところにまで声が届くくらいに大きな声で呼びかけている。 その声を聞きつけ、眼鏡屋の中からカジュアルな格好をした店員が出て来た。 ここに居て聞こえるくらいなんだから、下でのあの声は営業の邪魔でしか無い。 (ゆっ!おじさん!れいむとゆっくりーー ーーーーーゆぶっ!) 店員はゆっくりのリボンを摘んで持ち上げ、反対側の歩道に放り投げた。 反対側の歩道には何の店も無く、工事中なのでスチール製の真っ白い壁がそびえ立っている。 気絶したのか、れいむはピクリとも動かない。顔から落ちたんだから無理も無いだろう。 ゆっくりは痛い目に遭ったら何処かに消え失せるのが通常だ。 だからあのれいむも起きたらきっと何処かへ行く。 そしてその先で何時か死ぬ。 別にここが駅前だから、ゆっくりの事が嫌いだからという理由から 人はあの様な冷たい態度を取るわけではない。 さっきも言った事だが、もう誰もゆっくりに対する特別な興味を持っていないのだ。 少し前は違った。 喋るペット、元気なペット、モチモチと柔らかい体をした、可愛いペット、 そんな魅力的な特徴に皆が惹かれ、ゆっくりがペットとして大流行した時代も有った。 しかし今じゃペットゆっくりの人気もガタ落ち。かつての大人気っぷりは見る影も無い。 その理由は"喋れる"ゆっくりに対して人々が期待を持ち過ぎた事に有った様に思える。 自分の言う事を理解してくれるから手が掛からない。暇な時は楽しくお喋り出来る。 初めゆっくりを飼った人はそんな風に都合良く考えていた者が多かったのだろう。 しかし逆だったのだ。 何故ならゆっくりは人間にとって都合のいい事ばかりを喋るぬいぐるみではなく、 人間と同じ様に聞き、感じ、思考して喋る生き物だったから。 しかも人間並みに、或いは人間以上に喜怒哀楽の激しい正直な生き物だったからだ。 そんな生き物と上の様な期待を抱いていた人間が一緒に暮らして食い違いが起こらない筈も無い。 飼えばゆっくりは無条件で自分に懐き、何の文句も言わないなんて事も有り得ない。 そして多くの飼い主を落胆させたのは 言葉が通じるのに中々ゆっくりが言う事を聞いてくれないだけでなく、 不平不満、そして要求している事を自分に分かる言葉で持ちかけてくる事。 これは飼い主にとって面倒臭い事この上無く、"時と場合"に応じて非常に不快なものにすらなる。 手がかからないと期待してた人達からすれば尚更の事だ。 手の掛かり具合は腕白盛りな人間の幼児と遜色無いものなのかもしれない。 そんな本当は手のかかるゆっくりを上手に躾けられた飼い主がどれだけ居たか。 それは現状が物語っている。 そして肝心のゆっくりとのお喋りも、多くの人が『思っていたより』楽しくないと言う。 理由は人とゆっくりの知能の程度には一定の開きが有る為、会話がし難い事。 そしてその知能の差故に各々が持つ関心も異なるからだ。 ゆっくりは美味しいご飯が好き、楽しい玩具が好き、『ゆっくり』の話が好きだ。 だが人間側のちょっと難しい話になるとあまり興味を示さず、嫌がってしまう。 よく分からないからだ。愚痴なんかは当然嫌い。 しかし多くの人が望んだのは後者の様な会話だったんじゃないだろうかと思う。 また当然の事ながら知識や語彙も少ない為、出来る会話の幅も広くない。 大抵の場合ペットゆっくりは家の中でお留守番だから知識も語彙も碌に増えないだろう。 飼い初めの頃はまだ良いだろうが、そのうち話す事も尽きて会話をしなくなるかもしれないな。 『ゆっくり』の話がしたくて飼ったワケでは無いのだろうから。 兎に角、人語を解するから飼ったという人は拍子抜け。 勝手な事だが人は喋るゆっくりの事を『期待外れ』と感じたのだ。 小さくて可愛いと考えてた人の期待も外れる。 人の元では平均寿命8年と長生き。最終的に体高だけで60cmを超えるのも珍しくない。 デカくなったゆっくりは俺から見てもあんまり可愛くない。というか怖い。 ちなみに食う量も増えてゴールデンレトリバー並に食費がかさむ。 デカくなったのは更に重くノロくなる為、家の中での様々な面において邪魔になる。 かと言って庭なんかで飼うと寂しがり、大きな体をしてゆんゆん泣く。 それでも外に放って置くと知らないうちに死んでたり いつの間にか恋仲になった他のゆっくりと子を成していたりもする。 これが悪夢ってヤツだろう。とてもじゃないが笑えない。 手が掛からないとの期待はこんなところでも裏切られる。 人々の勝手に抱いていたゆっくりへの多大な期待はことごとく裏切られ、 ペットとしてのゆっくりへ関心も次第に薄れていった。 その結果かなりの数のゆっくりが無責任にも街に捨てられ、未だに問題になっている。 捨てる主な理由は仲違いしたから。反抗されたから。二匹飼いしたら自分と話さなくなったから。 妊娠したから。意外とつまらなかったから。どれも最高に無責任なものだ。 今ではもう、そんな面倒なゆっくりを飼う人間は ゆっくりの事が本当に好きな僅かな人達だけになった。 そして俺はゆっくりが何の為に人間の前に現れたのかを心の底から理解出来ていない。 ゴチャゴチャ考えてるうちにハンバーガーはもう食い終わった。 あとは尽きるまでコカコーラをズルズルやるだけ。 兎に角ゆっくりはもうペットとしてさえ人の関心を惹かない。そもそもあまり向いてなかったのだ。 久しぶりに見たから気になったが、そろそろどうでもいい存在になってきた。 保健所の人間が来ないうちにとっとと消え失せる事をお勧めしておく。 (ゆっく…り…ゆっぐり”ぃ…) 永らくガラス窓の下でダウンしていたゆっくりだが ようやく起きたようで、泣きながら体を起こした。 泣いてるのはゆっくりしていって貰えないのが辛い為だろう。 (ゆっぐり”じでいっでね”!ゆっぐじじでいっでね”ぇ!!) 涙混じりのガラガラ声で叫び出すゆっくり。周りには誰も居ないのに。 あれだけ痛い目に遭わされたのに消え失せないとは。 何がそんなにあのゆっくりを駆り立てるのか? どうして人をゆっくりさせたがるのだろうか? 俺は彼等と"ゆっくり"した事が一度だけ有るが、それも未だ謎だ。 ゆっくりの『ゆっくり』と言えば俺は俺で期待を裏切られた事が有る。 随分前に駅前のベンチで本を読みながら友人を待ってたら ゆっくりが近寄って来た事が有ったのだ。 『ゆっくりしていってね!』とお決まりの言葉を言いながら。 俺はちょっと困ったが、当時はまだゆっくりに興味が残っていたので 読んでいた本をカバンに仕舞ってゆっくりと『ゆっくり』する事にした。 『ゆっくり』と名乗るくらいなんだからとんでもなくゆっくりしている筈だ、 もしかしたら他人をリラックスさせる力を秘めているのかもしれない、と期待しながら。 しかしなんの事は無い。ゆっくりは空いたベンチに乗って日向ぼっこをしてるだけ。 普通にゆっくりするだけだったのだ。 勝手に期待しておいてこんな事を言うのもなんだが、ガッカリした。 ゆっくりの『ゆっくり』なんてゆっくりじゃなくても出来るし 別に俺が居なくても出来る、ごく普通の事だったのだ。 期待外れもいいところだった。 その日を境にゆっくりは俺にとって完全に無価値な存在に変わった。 (お、おにいさん…れいむと、れいむと一緒にゆっくり…) 窓の下では汚れたれいむを避ける様に、また一人通り過ぎて行く。 彼はipodらしき物を弄りながら歩き去って行った。 どうでもいいのだ。ゆっくりとの『ゆっくり』なんて。 それこそ何十回も聞いていい加減飽き気味のポップス以上にどうでもいいのだろう。 「あれ、○○さん、あそこに居るのゆっくりじゃない?」 「あらホント、いまどき珍しいねぇ。 そう言えばね、この前○○さんが電話で話したことなんだけどーーー」 隣の奥様方が今更ゆっくりに気付いたように話題に上げる。 ずっと俺と同じ方向見ながら話していたのに(ガラス窓に反射して丸わかりだった) 会話のクッション程度のものにゆっくりを使ったのだ。 そんなモンだ。例えゆっくりが少しくらい泣いてたとしてもな。 (ゆっぐり”ぃ…… ゆ”っぐ りぃ” ぃ”い”ぃ”!!) コーラを飲み干して立ち上がると、 俯いて本格的に泣き崩れるゆっくりの姿が見えた。 あそこで泣いてる分にはまだ良いが、果物屋の店員がボソボソ何か喋っている。 もしも交差点を超えてアッチ側にいったら 動けなくなるくらい強く蹴られるかもしれないな。 俺等人間の中でも、彼等にとってゆっくりは特に邪魔なんだから。 もう休み時間は終わりだ。 俺は紙コップの底にヘバりつく氷を4、5個口に放ってガリガリ噛み砕きながら、 トレイの上のモノをゴミ箱に捨てて店を出た。 生暖かい風が頬を撫でる。近所に予備校があって高校生が良く通る所為だろうか この歩道は黒ずんだガムやらツバやらがこびり付いてて汚い。 こんな小汚い歩道でゆっくりとゆっくりするくらいなら 今みたいな店の中で一人でゆっくりしてた方がずっと良い。誰だってそう思う。 「ゆっ、ゆっくり!ゆっぐりしていっでね!」 交差点で信号を待つ間、左から嬉しそうな声が聞こえて来た。 左方向に視線をやるとあのゆっくりが居た。 頬を涙でベショベショに濡らしているが笑顔満面。嬉しそうだ。 立ち止まっている俺を見て勘違いしたのかもしれないな。 "ようやくゆっくりしていってくれる"って。 「ゆっくりしていってね!」 ビデオ屋に寄って帰ろう。 最近ずっと行ってなかったから新作テープの取れたのが沢山有る筈だ。 そんな事を考えながら、信号が青になったのと同時に俺は歩き出した。 口の中の氷はもう無くなっていた。 ーENDー
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/958.html
注意書き 舞台について特に決めてはいませんがたぶん幻想郷の外だと思います。 人間に飼われるゆっくりがいます。 虐待描写は温めです。 前半は特にいじめとか言った描写はありません。 「ゆっくりしていってね!!!」 「ん?なんだ、ゆっくりか…」 俺が大学のレポートを作成していると窓からゆっくりれいむが入ってきた。 まあ、特にゆっくりが嫌いというわけでもないし、汚れているというわけでもない、荒らしたり自分の邪魔をしないのであればそのまま放っておこうと思った。 「えーと…財務管理財務管理…」 教科書をめくり索引から項目を探す。 「おにいさん!!ここはおにいさんのおうちなの?」 「そうだよ」 無視して自分の家宣言されても困るので適当に答えておこう、あ、財務管理、5ページか。 「ゆ…あまりひろくないけどとてもゆっくりしたおうちだね!!」 「そりゃどーも、でもおまえの家よりは広いぞ?」 「そーだね!!!」 なんだ、理解はしていたのか、じゃあいいや、レポートを書こう。 しばらくれいむは黙って俺の方を見ていたがしばらくして俺に声をかけてきた。 「おにーさん!ゆっくりしてる!?」 何度も教科書とレポート用紙を見比べ、ペンを走らせる俺がゆっくりしてないように思えたのだろう、事実俺は今ゆっくりしていない。 「いや、あまりゆっくりしてないな」 「どおして!?ゆっくりしよう!!ゆっくりしていってよ!!」 そんなこと言ってもレポート書かないわけにはいかないし、でも急いで書くものでもなかったので、休憩がてらこいつと少し話してもいいかなと思った。 「じゃあどうすればゆっくりできるんだい?少し教えてほしいな」 「ゆゆ、そうだね…」 れいむは顔をしかめながら、しばらく考えた後答えた。 「おひるねをするとゆっくりできるよ!!」 「パスだ、俺に昼寝の習慣はない」 夜眠れなくなって授業中に寝てしまい、先生に怒られるのは嫌だからね。 「ごはんをたべるとゆっくりできるよ!!」 「却下、さっき昼飯を食ったばかりだからこれ以上は食べれない」 「ゆゆゆ…おにいさん、てごわいね…」 何が手ごわいんだよ、何が。 「そうだ!すっきりすればゆっくりできるよ!!」 「!?!?!?」 「ゆふふふ、すっきりすることにきづいたれいむはさすがゆっくりしてるね!!」 「俺には…」 「ゆ?どうしたの、おにいさん?」 「俺には…すっきりする相手がいないんだよぉ…」 お兄さんは泣いてしまいました。 「そう、おにいさんにはすっきりするあいてがいないんだね…」 「うぅ…」 ちくしょー、今まで親戚以外の女性に振れたこともない、俺の心の傷を掘り返しやがって… 「でもれいむにはすっきりするあいてがいるよ!!まいにちまりさとちゅっちゅしてすっきりするよ!!それもれいむもまりさもまだわかいからにんっしんしないすっきりだよ!!」 なんだよ、その「まだ社会人じゃないので避妊しています」みたいな言い方は!?それに毎日やってるのかよ!? ああ、なんだろう、たかが饅頭の癖になんだか怒りが込み上げてきたぞ…? 「ちゃんとにんっしんしないれいむはとてもゆっくりしてるでしょう!!じゃあれいむはもうかえるね!!かえってまりさときょうもすっき…」 「饅頭が調子に乗ってんじゃねえぇー!!」 俺はれいむの顔面をがしりと掴むと全力で窓の外に放り投げた。 5秒ほどそのままの体勢で固まってた俺は、レポートを書くために椅子に座った。 「……ふぅ、すっきり、さて、レポートレポート…」 俺ったら学生の鏡だねぇ、さて、財務管理は… 「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ぁぁぁぁぁ!!!!や゛め゛て゛え゛ぇぇぇ!!!」 「な、なんだぁ!?」 急に窓の外から悲鳴が聞こえてきた、俺はあわてて窓の外、悲鳴をした方向を見る。 「い゛や゛だぁぁぁ!!す゛っき゛り゛し゛た゛く゛な゛い゛い゛ぃぃ!!!」 「はぁはぁ、しょたいめんのありすにいきなりちゅっちゅしてくるれいむかわいいいぃぃ!!すっきりしよぉねえぇぇ!!」 なんと、さっき投げたれいむをありすが襲っていた、どうやら俺が投げたれいむがありすに命中、ちょうど口と口がぶつかる形になってありすが発情したのだろう。 まったく、この饅頭はどうしてこう俺の目の前ですっきりの話をしたがるんだろうか、すっきりしたがるんだろうか? というか白昼堂々、何の遮蔽物もないアスファルト上で交尾するっておかしいだろ? 「んほぉぉお!!いいよぉ!!れいむ!!れいむぅう!!」 「い゛や゛だあ゛ぁぁぁ!!すっきりしたら…しんじゃう゛う゛よ゛ぉお゛ぉお゛!!!!」 最初は放り投げただけで許してやろうと思ったのに…目の前で交尾なんかされては俺の怒りは有頂天だ。 交尾に夢中で周りを見る余裕がない二匹に近づいた俺は金属バットで二匹まとめて叩き潰した。これでゆっくりレポートが書ける… そう思ってレポート用紙を見るとおかしなところに気づいた、途中から文章が同じことの繰り返しを延々と描いているだけになっている… きっと、れいむの話に適当に答えている時にレポートに対する注意がそがれたのだろう… 「やっぱり最初から追い出しとくべきだった!!あの饅頭がぁ!!」 結局、レポートは書き直す羽目になった。 あとがき 普通な虐待ものを書こうと思ったのですが… 虐待描写って難しいですね。 9月4日 1724 セイン このSSに感想を付ける